教科書に載ってないUSA語録 町山智浩さん

2012年10月07日

町山智浩さん(50歳)=西田裕樹撮影

■「他者」のまなざし、辛口で

 14年になる米国暮らしで触れた流行語を切り口に、「日本で知られていないアメリカ」をつづったエッセー集を出した。週刊文春に「言霊USA」の題で2009年から連載するコラムのうち、今年8月までの146本を加筆修正して収めた。
 「マニアックにならないよう、やじ馬的な感覚で書いています」。たとえば「adorkable」(アドーカブル=ダサかわいい)な主人公をウリにしたテレビドラマの話。ネタ探しに、学校ではやっていることを娘に聞く。入り口は卑近で背景を丁寧に掘り下げるので、彼我の違いがわかりやすい。米国に住む「他者」の視点を貫いている。
 映画評論家にしてコラムニスト。移住のきっかけは、妻が米国企業に就職したことだった。痛感するのは「一歩間違うとのたれ死ぬ怖さ」。民間医療保険への加入はぜんそくを理由に断られ、妻の勤務先と契約する保険に入ったが、仮に妻が失業すれば無保険になる。先進国で唯一国民皆保険制度がない国——それを変えようとオバマ大統領が進める医療保険改革は頑強な抵抗に遭う。「他国並みにするのはアメリカへの侮辱だと。日本とは発想が逆なんです」
 失言を繰り返すほど好感度が上がる大統領候補の存在には、反知性主義の根深さを感じた。米国の現状は「キャピタリズムでもリベラリズムでもない、ポピュリズムの国」と映る。
 テレビで見る観光地、娯楽産業やIT産業……。そんな一般的イメージと違う姿を伝えるエッセーは、皮肉や風刺が利いている。オチに苦労するのだとか。「2日間くらい、のたうち回っていることもあります」
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文芸春秋・1050円

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