中国の今後 園田茂人さんが選ぶ本

2012年11月11日

北京の人民大会堂で8日、開幕した中国共産党大会 =樫山晃生撮影

 中国共産党の第18回大会が、8日開会した。開催時期が予想より大幅に遅れたが、薄熙来(ポーシーライ)・前重慶市党委書記の党籍が剥奪(はくだつ)されたり、習近平(シーチンピン)・国家副主席の親族の蓄財問題がリークされたりと、人事がらみの醜聞が続いたからだろう。選挙に頼らず「最も広範な人民の根本的利益を代表する」党の人事は、それだけセンシティブなのである。
 もっとも、どのような人事が行われようとも、中国共産党が抱える困難に変わりはない。
 リチャード・マグレガー『中国共産党』は、こうした困難に党がどう立ち向かおうとしているのかをノンフィクション・タッチで描いている。毛里和子『現代中国政治』(名古屋大学出版会・2940円)といった手堅い専門書に比べ、筆致がビビッドで一気に読めるのがよい。
 政治と結託するビジネス、中央の政策に面従腹背する地方、インターネットの拡(ひろ)がりの背後で行われる情報管理など、中国共産党の統治が抱える問題が詳述されているが、示唆的なのが、本書の終章が歴史問題にあてられている点だ。
 党は長く、中央宣伝部を中心に正史(正しい歴史)の管理をしてきたが、綻(ほころ)びも見える。著者によれば、従来ならば処刑されていた者も、今では惨めな刑務所暮らしで済むようになってきたというが、この「進歩」をどう理解するかが、中国の今後を読み解くヒントとなる。

■どう向き合うか

 広く中国全体を取り巻く問題をコンパクトにまとめ、その見取り図を示したものとしては国分良成編『中国は、いま』がよいだろう。何よりその多様な書き手が魅力的である。
 今や9割近くの日本人が「日中関係はよくない」と考える状況にあって、編者は「あとがき」で「好き嫌いではなく、日本はまさに中国に正面から向き合わなければならない」と述べる。とはいえ、どのように向き合うべきかについては、読者の意見も分かれるだろう。
 以前であれば、「政冷経熱」とばかり、経済を独立した事象と見なすことも可能だったが、昨今の日中関係を見る限り、すでに別の局面に入っているようにも思える。
 同書の第8章「テクノ・ナショナリズムの衝突」は、レアアースをめぐる日中関係を扱っているが、日本の企業も、中国の動向を分析することなくビジネスを行うことが不可能となっている。共産党の新執行部人事に関心が向けられているのも、このような背景によるのだろう。

■「特殊論」を吟味

 中国の未来を考えるにあたって、私たちがどのように中国を理解してきたかを振り返ることも大切だ。
 中兼和津次『開発経済学と現代中国』は、経済発展を遅く始めた方がより急速に発展できるとする「後発性の利益」といった概念や、経済発展に伴って労働過剰から労働不足へと転換していくとするルイス・モデルなど、従来の開発経済学で彫琢(ちょうたく)されてきた考えが、どれだけ現代中国の変化を説明できるか検証した好著だ。
 近年、西側諸国とは異なる中国独自の発展モデルとして、しばしば中国モデル(中国模式)が取り上げられるが、本書はこうした中国特殊論の妥当性も吟味している。
 経済学の基礎知識がないと通読しにくいかもしれないが、中国の今後に関心をもつ読者には、ぜひともチャレンジしてもらいたいと思う。

 ◇そのだ・しげと 東京大教授(中国社会論、比較社会学) 61年生まれ。著書『不平等国家 中国』、共編著『中国問題』など。

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