ハスク・エディン〈1〉 [作]如月芳規

2013年01月06日

■我々はどんな場所にいるのか

 読み終えた時に、描き手の気迫や覚悟というものが、静かに伝わる作品に出会うことがある。このまんががそうだ。
 内容は戦場もの。廃墟(はいきょ)のような都市を舞台に、政府側の兵士である子どもたちが反政府勢力と戦う姿が描かれる。昔から長く続く戦いの理由は、もはや風化してよくわからない。街の中心にある塔を守るため厳しい戦闘が繰り広げられるが、その塔が何なのか、なぜ守るのか、いまや戦場では誰も知らない。ただ、命をかけたギリギリの戦いの日々が虚(むな)しく続いていく。
 軽々しく人が死ぬ戦場で日常を送りながら、実直に戦う子どもたちは、決して鈍感なのではない。むしろ敏感で繊細すぎる者たちが、受け入れる以外にないこの現実に、自分なりに向き合おうとする姿が、さまざまなエピソードで描かれる。
 世界の成り立ちに不条理さを感じたとしても、決して揺るがない圧倒的な現実を前にして、選びようもなく今ここにいるのであれば、適応して生き延びるしかない。そんな逃げ場のない切迫感の中で、だからこそ、誰かとそこで生きていく時間の濃密さと切実さを、著者は力強くていねいな描写でとらえていく。
 我々は今どんな現実にいるのか。ここはどんな場所なのか。作品に静かに響く問いが、強く印象に残る作品だ。
    ◇
一迅社・580円


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