わたしとSF

辻真先(作家)テレビとSFの草創期を生きて

2013年04月17日

辻真先さん

 今年で81歳の誕生日を迎えたのだから、SFとの出会いもそれなりに古い。海野十三・蘭郁二郎たちをリアルタイムで読んでいる。海野の長編『蠅男』はサイボーグが犯人という、当時の感覚でいえばゲテものであったし、蘭の『脳波操縦士』は核となる大人の恋愛模様が、ガキにはいまひとつ呑みこめなかった。それでもπを暗号に代用したロボットテーマには圧倒された。おかげでいまでも円周率を30桁以上暗記している。
 新しいもの好きが高じて、放映開始直後のNHKテレビ制作に従事したぼくは、自前の企画で連続ドラマを演出する機会を得て、手塚治虫原作のSF『ふしぎな少年』を送り出した。というと自信満々だったようだが、ありていにいえば特撮大好き男がナマ放送でSFをやってみたかった、それだけだ。手塚の旧作『新世界ルルー』に時間を自由に止める能力のヒーローが登場する。「時間よ止まれ!」というアイデアだが、手塚先生は大いに乗ってくれた。せっかくだから新作を書き下ろしましょうと、晩期の「少年クラブ」で連載を開始した。ぼくも喜んで、毎日放映の帯ドラマであったから、連日のチャンスにさまざまな工夫を盛りこんでみた。今の目で見れば滑稽でしかあるまいが、電子撮像ならではのネガポジ変換や各種ワイプにメリエスそこのけの原始的トリックをミックスして、やたらいろんなモノを止めたり消したりした。そのころのNHKにSFなぞという代物を知る人は皆無だったので、企画を通すには苦労した。時間が止まる? なんだそりゃ。さんざ上司に首をひねらせたが、いざ放映がはじまるとお山の大将で、好き勝手な話をでっちあげ演出した。生涯でいちばんSFづいていた時代だろう。悦にいっていたぼくであったが、のちにテレビアニメの脚本に転じてから、『エイトマン』『スーパージェッター』等々で、俊英のSF作家たち(平井和正・豊田有恒・半村良・眉村卓・筒井康隆ほか)に出会って茫然とした。SFというメディアの無限の上昇期をまのあたりにしたぼくは、物書きとしてなんと幸福であったことかと、いまなお痛感しているのだ。
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 つじ・まさき 1932年、名古屋生まれ。テレビ企画演出を経てアニメ脚本を多作したのち、ミステリやマンガ原作を書く。本格ミステリ作家クラブ会長を務めている。著書に『アリスの国の殺人』『完全恋愛』(牧薩次名義)など多数。

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