わたしとSF

木立嶺(作家) SFが私に見せてくれる夢

2013年05月01日

電子雑誌BOX-AiR連載中 「ホシは経費で落ちません!」第1話扉より (絵:おどり)

 私が生まれて初めて手にした小説は、SFでした。それ以来、私が読む小説といえばSFと相場が決まっていました。物書きになろうと決意した時も、当然のようにSFの賞の門を叩きました。ところが、いざ実際に本を出す立場になってからは、SFとだいぶ疎遠になってしまいました。
 その反動でしょうか、私は睡眠中によく夢を見るのですが、近年そちら側にSFが侵食してきました。それもどういうわけか、ほとんどが悪夢です。
 ここに、昨年の8月30日から今年2月21日までの、およそ6カ月間に私が見てしまった、SF的悪夢の一部をご紹介します。なにぶん夢ですので、矛盾や説明不足については、何卒ご容赦ください。
 
8月30日「設定倒れ」
 木星の大気圏内に設置された浮遊観測基地にいた私は、所用で宇宙行きのシャトルに搭乗した。しかし、発進後すぐにエンジントラブルが発生、シャトルは軌道高度まで上昇できずに大気圏に再突入し、空気との摩擦で機体が炎上、私は蒸し焼きになる。
 
9月26日「夢の中まで」
 SF小説の執筆中に、ネタに詰まってしまった。すると激しい頭痛に襲われ、頭痛薬を2錠飲んでも治らない。
 
10月9日「近未来バッドエンド」
 アーケード街を散歩していたところ、いきなり対人4脚歩行戦車の集団に襲われる。あわてて近くのビルに逃げ込むが、相手は壁をするする上ってきて、部屋のすみに隠れていた私を見つけ出した。戦車は主砲をこちらに向けて……。
 
10月29日「助けたはずが」
 映画「ターミネーター2」の主人公、ジョンとサラのコナー親子がゾンビに襲われ、ゾンビウイルスに感染した。2人は私に、ゾンビ化する前に自分たちを焼却するよう頼み、焼却室に自分たちを閉じ込める。しかし、私が燃焼ボタンを押したとたん、「外に出せ」と言われて、急いでドアを開けると、コナー親子はすでにゾンビ化していた。私は2人に襲われ、あえなくゾンビに。
 
12月11日「時間鬱旅行」
 タイムマシンで三国時代の中国に赴き、あこがれの司馬懿の元を訪れるが、その場の全員に無視される。
 
2月21日「流れよ我が涙」
 締め切りの近い原稿をせっせと仕上げていると、突然テレパシー能力に目覚め、編集部内の声が聞こえるようになった。
編集長「おーいみんな、担当している作家の中で、いらない奴のリストを作っといてー」
編集者「はーい!」
 
 このように、SFは私に精神的ダメージを与えるべく、あの手この手で悪夢を仕掛けてきます。……と、ここまで書いて気がついたのですが、「SF」を「彼女」と言い換えても意味が通じますね。しかし、疎遠になった相手に悪夢を見せてくる彼女なんて、怖くて恐ろしくておちおち眠ることもできません。
 けれども実は「彼女」、時には悪夢の代わりに哲学的な命題を備えた夢や、全米が号泣するほどの感動超大作の夢を見せてくれることもあるのです。
 やっぱり優しいんですね。(本当に?)
   ◇
 こだち・りょう 1973年三重県生まれ。「戦域軍ケージュン部隊」で第8回日本SF新人賞佳作を受賞。2012年に講談社BOXより「次女っ娘たちの空」を上梓、現在BOX-AiR誌上にて警察小説「ホシは経費で落ちません!」を連載中。

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