重版出来!(1) [作]松田奈緒子

[文]山脇麻生(ライター)  [掲載]2013年04月07日

表紙画像 著者:松田 奈緒子  出版社:小学館

■ヒット作が“作られる”まで

 昨年、刊行された新刊コミックスは1万2千点以上。莫大(ばくだい)な数字の陰には、一冊一冊の作品が生まれおち、読者に届くまでの小さくて愛(いと)しい多くのドラマが詰まっている。その中心にいるマンガ家はもちろん、周縁の編集者や営業マン、書店員すべてに視線を注いだ人間ドラマが本作だ。
 主人公は心から熱くなれる場所を求めて出版社の門をたたき、週刊マンガ誌編集部に配属されたばかりの黒沢心。初めての名刺に涙を滲(にじ)ませ、巨匠がスランプを脱するきっかけを作る――日々の手ごたえを胸に、仕事に打ち込む姿がいきいきと描かれる。元柔道部ゆえの直情なキャラクターも暑苦しくなく、素直でチャーミングに映る。
 特にグッときたのは、無名作家の単行本のフェアを、全国の書店で仕掛ける回。宣伝費をかけずとも、作品を支えるすべての人が自らの手足を動かす姿が作品内のセールスを加速させ、本作を読む側の感動をも加速させる。ヒットは生まれるのではなく、多くの裏方の手を経て“作られる”のだ。その原点に「感動」があるというシンプルな事実が胸を打つ。
 新しい才能に門戸を開き、その作品を世に送りだしてきた人々の努力によって、「マンガという現場」は常に活性化してきたんだなあとつくづく思う。
    ◇
 小学館・580円

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