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模倣の殺意 [著]中町信

2013年04月14日

■著者没後、予言通りの人気

 新進作家の男が服毒して死亡、警察は自殺として処理する。しかし故人を知る女性編集者は不審に思い独自に調査を開始。一方、ある男性ルポライターも別ルートから取材を進める。彼らが得る異なる手がかりは、やがて複雑に絡まりあう――真相を知った時、緻密(ちみつ)に構築された道筋に気づき感嘆した。40年前に発表のミステリーだが現在大ヒットしているのも納得。
 04年に創元推理文庫から復刊され、4万5千部ほど刷った後は在庫切れとなっていた。昨年末、書店チェーンの文教堂から品切れの良書を仕掛ける企画を提案され4千部増刷。すぐ評判となり、他の書店でも置かれるようになった。「現在は無名に近い作家の作品が突然店頭で宣伝されはじめたことで、興味を持ってもらえたようです」と版元営業部の渋沢大和さん。今の読者は30~40代の男女が中心だ。
 1973年に双葉社から刊行された時は『新人賞殺人事件』という題名だった。その後87年に徳間文庫入り。創元推理文庫から復刊される際に雑誌掲載時の題名に戻した。著者の作品を同文庫に入れるのは東京創元社顧問の戸川安宣さんの長年の希望。「初期には手の込んだ仕掛けがある小説を次々と発表した作家。単に意外性で驚かすだけでなく、丁寧に計算されている点も魅力です」。現在の文庫担当編集者の細田若奈さんも「見事に騙(だま)されました。古い作品ですが重苦しくないため、純粋に推理を楽しめます」。全編に漂う昭和の香りも、今読めば新鮮だ。
 中町氏は妻から「あなたの初期作品はあなたが死んだあとで評価されると思う」と言われたという。その妻には先立たれ、本人も09年にこの世を去った。予言通りの今の人気を受け、著者の『天啓の殺意』『空白の殺意』(ともに創元推理文庫)も重版が決定。そろそろ書店に並ぶはずだ。
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 創元推理文庫・777円=22刷30万5千部

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