思い出す本 忘れない本

岡田准一さん(俳優)と読む『十角館の殺人』

2013年04月21日

■言葉のマジックって面白い

『十角館の殺人』 [著]綾辻行人 (講談社文庫・730円)

 母がミステリー好きで、綾辻行人さんの『十角館の殺人』は家にありました。ピアノの先生をしていた母は、生徒が待ち時間に読めるように、本をたくさん教室に置いていました。生徒のためなのに、僕はそこから本を盗み出して読んでいました。子どもの本の中に、母が好きなミステリーも紛れていて、アガサ・クリスティやスティーブン・キング、そして綾辻さんの「館シリーズ」がそろっていました。
 この本を初めて読んだのは、小学校の高学年くらい。文章だからできるマジックに驚きました。言葉って面白い、と意識するようになった。本が好きになるきっかけの1冊だった、と言っても過言ではありません。
 東京に出て、改めて自分で買い、読み直しました。何よりもまず、「敬愛すべき全ての先達に捧ぐ」という最初の一文に、作家の気概を感じました。「捧ぐ」という言葉は優しいけれど、戦っていくぞ、という宣言というか、これまでのミステリーへの挑戦状だったと思います。
 大学の推理小説研究会のメンバーが、十角形の館が立つ孤島を訪れるところから始まります。十角館を建てた建築家夫妻たち4人は半年前に、もう一つの館が全焼する事件で亡くなりました。学生たちは外の世界から閉ざされた奇妙な館で、1人ずつ殺されて、追いつめられていきます。
 母も姉も読んでいたので「どこまで読んだ?」「その先は言わないで」と会話できたのも楽しかった。もちろん、自分で謎は解けませんでした。綾辻さんは天才だな、と思います。2回目以降も、トリックがわかっているのに面白い。名作と呼ばれるものはきっとどれもそうなのだと思います。
 自分が出演する映画は、原作で読んでいることが多いです。これから公開される「図書館戦争」もやはり母が原作が好きで、僕も読んでいました。本を守る、という思いを大切に演じました。今冬公開の百田尚樹さんの『永遠の0』は撮影前に読んでいました。作家の方にとって転機となる作品を演じさせてもらう機会が多く、力が入ります。
 百田さんでは『海賊とよばれた男』も読んでいます。本屋さんの薦める本は読みますね。書店でポップのコメントを読むと、気になって衝動買いしてしまうことがあります。本好きという感覚は自分ではあまりなくて、物語を読むのが好き。物語を感じること、体験することは、いろんな感情を楽しめるから、生きていくうえですごく大事なことだと思います。
(構成・中村真理子)

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