著者に会いたい

島猫と歩く 那覇スージぐゎー 仲村清司さん

2013年11月03日

仲村清司さんと飼い猫の向田さん 、奥村智司撮影

■猫とともに再生へ向かう

 那覇は野良猫が多い街だ。中心部の国際通りから脇へ入ると、猫の集うスージぐゎー(路地)が縦横に走る。そこに広がる昔ながらの風景や個性豊かな猫たちの生活を活写した。「向田(むこうだ)さん」と名付けた飼い猫との、3年間の散策記だ。
 両親は沖縄出身だが大阪生まれ。1996年に移り住み、「大阪生まれの沖縄2世」を自称する。外からの視点で食堂やおばぁを取り上げた「沖縄本」は、共著を含めて30冊近い。「やり尽くした感があったが、猫がいましたね。地元の人もこんな身近な所が本になるの、と面白がってくれた」と話す。
 大向こうの沖縄リピーターもうならせるガイド本だが、私小説の趣もある。望んだ沖縄暮らしに疲れ、うつ病を発症した仲村さんが「再生に向かう物語」でもあるからだ。
 沖縄ブームに乗って著書が売れ、観光客が流れ込む間、仲村さんはつらい作業に向き合っていた。「半ヤマトの自分に沖縄の人はなじんでくれず、自分もなじめなかった。『なりたくてなれない沖縄人』を確認した」。心の病になったのも、そんな中でのことだった。
 猫は、状態の一番悪い時期に、わらにもすがる思いで飼い始めた。自らを頼り切る生き物を慈しむ日々。散歩の道すがらになじんだ野良猫たちは数年で世代交代していく。「明日をも知れない毎日を、彼らは懸命に生きていた。小さなことに自分はこだわっている、と思った」
 「2世」であることに開き直れた今、自らのルーツに思いが向いている。生まれ育った大阪市此花区を舞台に、沖縄の外で生きた沖縄県人や家族のことを、小説にしたいと構想している。
    ◇
 双葉社・1680円

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