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しあわせの書―迷探偵ヨギ ガンジーの心霊術 [著]泡坂妻夫

2013年12月08日

■紙の本ならではのトリック

 11月5日にNHKラジオ第1「ラジオ深夜便」で紹介直後、1987年発表の本書がネット書店のアマゾンで総合1位に躍り出た。反響は大きく先月だけで1万2千部増刷したという。
 紹介したのはスポーツ・コメンテーターの益子直美さん。それまで口下手だったが、この本を使った手品を披露することで初対面の人とも話せるようになったと言い、番組内で手品を実演しアナウンサーを驚かせた。
 ヨガと奇術の達人ヨギ ガンジーが登場するミステリーシリーズの一作。ある宗教団体が発行する小冊子「しあわせの書」を偶然手に入れたことから、ガンジーとその仲間は教祖継承問題に巻き込まれていく。読者はユーモアたっぷりの賑(にぎ)やかな謎解きを楽しむうちに、著者が用意したとんでもない企(たくら)みに驚くことに。「1年半おきくらいに増刷がかかるロングセラー。書店員さんと話していても、トリックが特殊な本としてよく名前があがります」と新潮社営業部の後藤結美さん。著者は故人だが、担当していた編集者の一人、桜井京子さんは「家業の紋章上絵師を継いだ職人であるうえ、マジシャンとしても有名でした。直木賞受賞作の『蔭桔梗(かげききょう)』のようにしっとりした作品を発表する一方、こうした仕掛けのある作品を手書き原稿で丁寧に組み立てていく方でした」と語る。
 本書のトリックは紙の本ならではのもの。同シリーズでは、現在絶版だが『生者と死者』も袋とじを利用したからくりが見事。どちらも紙媒体の面白さを再認識させる。「忘年会などで『しあわせの書』を活用する人もいらっしゃるようです。普段本を読まない人にも、こんな風に本で遊ぶことができると知ってもらえたら」と後藤さん。ただし企みに気づいた時の痛快な気分は一度しか味わえない。読了後もどうか、未読の方には何も明かさぬように。
    ◇
 新潮文庫・452円=22刷13万2千部

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