コミック

モリミテ [作]中野シズカ

2014年04月06日

■読めば読むほど発見がある

 前作『星匠』から4年ぶりの新刊。なぜそれだけの時間を要したかは、ページを開けばすぐわかる。切り絵のようにスクリーントーンを幾重にも重ねた美麗な画面。以前よりはシンプルだが、恐ろしく手がかかっていることは間違いない。これはもはや美術工芸品の域である。
 しかし、そんなビジュアルの魅力もさることながら、本作の白眉(はくび)は、むしろストーリーだ。
 ひょんなことから花屋を手伝うことになった主人公は、配達の帰りに相棒の青年とともに深い森の中に迷い込む。そこで出会った不思議な少女に導かれてたどり着いたのは、少女たちだけが暮らす奇妙な館。ハーブの香りに包まれた桃源郷のような場所で、2人は自らの苦い過去に思いを馳(は)せる。そして、その館にはある秘密が……。
 鬱蒼(うっそう)と茂った森のように先を見通せない物語は、美しくもミステリアス。プロローグからエピローグまで張りめぐらされた伏線、コマの隅々まで行き届いた仕掛けは周到で、言葉による説明が少ない分、読めば読むほど新たな発見をもたらす。
 短編でも冴(さ)えを見せていたストーリーテリングが、初長編となる本作で満開に。意味深長なタイトルも含め、深読みしだすと本当に物語の森から出てこられなくなりそうで怖い。
    ◇
青林工藝舎・1512円

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