コミック

近づいたり離れたり [作]水元ローラ

2014年05月11日

■名前をめぐってあれこれと

 私事で恐縮だが、「信長」は本名である。初対面の人には高確率で由来を聞かれるし、下の名前で呼ばれることも多い。おかげで子供の頃から名前について意識せざるをえなかった。しかし、程度の差こそあれ、自分の名前や呼ばれ方には、誰しも思うところがあるだろう。
 本書の登場人物たちも、名前をめぐってあれこれ感じ、考える。元カレと偶然再会して「結婚した」と嘘(うそ)の名字を名乗った松谷尚子、自分のキラキラした名前が嫌いな吉田莉亜夢、憧れの女子と下の名前で呼び合う妄想にふける今野瑞樹、物忘れがひどく自分の名前も思い出せなくなったおばあさん……。
 一見ありがちな設定から始まりつつ、各話わずか8ページのなかに伏線と小さなどんでん返しを仕込む。言葉とは裏腹な気持ちや自分でも気づいていない感情を表情やしぐさで示す。その技は巧みで、説明しすぎず、かといってわかりにくくもなく、すっきりした絵柄とも相まって読みやすい。同時発売の『キスのその先』(宝島社)は10代女子の初体験を描いたもので、どちらかというとそっち系作家のイメージがあったのだが、本作で一皮むけた感がある。
 あとがきマンガに記されたペンネームの由来には爆笑。やっぱり名前って大事だな。
    ◇
幻冬舎コミックス・680円



関連記事

ページトップへ戻る