ベストセラー解読(週刊朝日)

資本主義の終焉と歴史の危機 [著]水野和夫

2014年05月23日

■金利ゼロが意味すること

 もうすぐ資本主義が終わるそうだ。そう聞いても驚かないのは、ぼくたち自身うすうすそう感じているからだろう。なんだか終わりそう、いやすでにもう終わっているかも。アベノミクスで景気回復などといわれても、まるで実感がないように。
 水野和夫『資本主義の終焉と歴史の危機』の主張はとてもシンプルだ。資本主義は終わる、なぜならもうフロンティアが残っていないから。
 資本主義はフロンティア(周辺)を開拓することで資本(中心)を増殖させてきた。その結果、南米もアジアもアフリカも開拓されつくして、もはや地球上にフロンティアは残されていない。
 空間的なフロンティアを失った資本主義は、ITを駆使した金融取引により時間的なフロンティアを開拓しようとした。しかし時間を切り刻んで一億分の一秒を競う話になると、これも限界。
 その証拠に、先進国では金利ゼロ状態が続いている。金利ゼロということは、投資しても儲からないというのと同じ。資本増殖のサイクルが止まってしまったのだ。
 歴史の大転換がやってきた、と水野はいう。かつて歴史家のブローデルが「長い一六世紀」と呼んだ、一四五〇年から一六四〇年の転換期と同じように。中世封建システムから近代資本主義システムに替わったように、近代資本主義システムがつぎのシステムに替わろうとしている。
 いまさらアベノミクスだのリフレだのとじたばたしても意味はない、と水野はいう。終わりつつあるものをほんの少し延命させたところで事態が変わるわけではないのだから。
 じゃあ、未来は絶望的なのか。そんなことはないだろう。中世から近代になったように、新しい時代が来るだけだ。資本主義が終わっても、人類が滅亡するわけじゃない。変化はゆっくり進む。何が何でも経済成長しなきゃ、という強迫観念を捨てれば、意外と居心地はいいかも。

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