コミック

いちえふ(1) [作]竜田一人

2014年06月01日

■原発作業員たちの日常とは

 すでにひとしきり話題となった作品なので、ご存じの方も多いかも。福島第一原発で作業員として働いた著者が、その経験を基に描いたルポマンガだ。
 といっても、「原発の闇を暴く!」みたいな告発調のものではない。現場の作業員たちの日常=衣食住と仕事ぶりを淡々と綴(つづ)る。驚くべきは、微に入り細を穿(うが)つ観察眼だ。防護服に所属会社名と名前を書くマジックが机に埋めたキャップに挿す形で立ててある。休憩所では電気ポットのお湯でカップ麺ぐらいは食えるが、残り湯を捨てる流し台はないから〈スープは全て飲みきれ!〉。そんな細かな描写の積み重ねが説得力を生む。
 この感じ、花輪和一『刑務所の中』によく似ている。原発を刑務所になぞらえようということではもちろんなく、両者のものの見方が似てるって話。語弊があるのを承知で言えば、どっちも妙に楽しそう。シリアスな状況であるがゆえに生まれる滑稽味を率直に描き、それが作品に人間くささを与えている。
 主義主張ではなく、人間が主役。しかし、防護区域内への出入りや装備の面倒くささが、原発というものの厄介さを図らずも物語る。呆(あき)れるほどアナログでアナクロな作業現場、多重下請けの実態など、原発産業学習マンガとしても読み応えあり。
    ◇
講談社・626円


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