コミック

羊の木 全5巻 [原作]山上たつひこ [作画]いがらしみきお

2014年06月08日

■圧倒させられる心理ドラマ

 隣人がわからない。時々見かけるが、どんな人なのか。普段何をしていて、何を考えているのか。近所づきあいが減り、生活の多様化が進む時代に、隣人はますます正体不明で不気味な存在になっていく。そんな身近なテーマでミステリーを展開した話題作が、3年の連載を経て全5巻でついに完結した。
 ある町に次々と凶悪事件の元受刑者ばかりが、素性を伏せて移住してくる。法務省が実験的に進める極秘計画だった。目的は彼らを社会復帰させ、過疎化の進む地域の活性化にも役立てること。しかし、再び凶悪事件を起こすのではないか? そんな疑心暗鬼が、人々の過敏な反応を引き寄せる一方、移住者らは謎めいた行動をとり始め、物語は巻を追うごとに緊迫の度を高めていく。
 人物の存在感が強烈だ。いかにもまんが的な絵で、実は複雑な心理ドラマ向きとは思えない。しかしまんが的パターンの表情だからこそ、その単純さに収まりきらない何かが表情の下でうごめいていることを、読者は勝手に想像してしまうのだ。シンプルな絵が、不意打ちのように突然雄弁に何かを語りだし、かえって強く心を動かされる。ベテラン同士の力がうまくかみ合い、異様なテンションで読者を圧倒する一作だ。
    ◇
講談社・700〜710円


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