コミック

レストー夫人 [作]三島芳治

2014年06月15日

■怖く美しく温かい不条理劇

 その学校では、毎年2年生が「レストー夫人」という劇をやる。七つのクラスが7種類の「レストー夫人」を上演するのだ——という導入部を読んで、吉田秋生『櫻(さくら)の園』のようなものを想像したら全然違った。
 あるクラスの劇ができるまでを複数の生徒の視点で描く。その手法自体は『櫻の園』と同様だが、等身大の少女たちの心理を活写した同作とは異なり、こちらはシュールで奇想天外。主役を演じる超絶美少女が語る幼少時の体験、言葉を発しない級友のために腹話術でアテレコする女子、模型好き男子が作ったアウトサイダーアートのような衣装など、登場人物たちの病的なまでの欠落(あるいは過剰)に震撼(しんかん)せずにはいられない。
 暗示的なシーンやセリフ満載で、人形のように模式化されたキャラクター、ほぼ固定パターンのコマ割りも舞台のよう。演劇を題材にしながら、作品そのものが極めて演劇的である。
 精神医療の分野では演劇療法なるものも一部で行われているようだが、思春期の抑圧や不安感を演劇によって解放、修復するという点で、本作はまさにそれ。レストー(RESTOR)はもしやRESTORE(修復、復元)に掛けているのか……などと、つい深読みしたくなる。怖くて美しくて温かい不条理劇だ。
    ◇
集英社・555円








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