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神秘 [著]白石一文

2014年06月22日

■人生の意義を問う内省の物語

 五十三歳の菊池は出版社の役員だが、末期の膵臓癌(すいぞうがん)と診断され、余命一年を宣告される。菊池はふと二十一年前に出会った病を治す力をもつ女性を思い出し、彼女を求めて神戸に赴く。
 癌にかかった男の闘病記というより、癌を通して人生の目的や人間の存在を様々な観点から捉えなおす物語である。白石一文はいつも人は何のために生まれ何のために生きるのかの思索をめぐらすけれど、今回は一段と厳しい内省が繰り返される。
 でも、白石らしく物語は波乱に富み、人物たちがおりなす出会いと別れが新たな縁を生み出して、驚きの真実を見せる。「私たちの人生は私たちが感じたり想像したりしている以上に、一つの定めに従って動いている」ことを感得させるのだ。
 菊池は、バーニー・シーゲル『奇跡的治癒とはなにか』、スティーブ・ジョブズの伝記、志賀直哉、聖書などを縦横に引用して病気の意味や人生の意義を問いかけ、やがて「がんはね、生まれ変われっていうサインなのよ」という言葉に出会う。本書が力強いのは、自分は一体何に向かって病を得たのかと未来にむけて問いかける点だろう。
 ややメロドラマ的な要素が強く、着地にも不満が残るけれど、それでも生きることの神秘にふれていて実に感動的だ。
    ◇
毎日新聞社・2052円

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