視線

英国ポタリーへようこそ——カントリー・スタイルの器と暮らし [著]井坂浩一郎

2014年07月06日

地元の赤土で成形したスリップウエア。これはクライブ・ボウエン作のティーセット (C)梶山正

 旅好き、陶芸好きである。ゆえに旅の目的地として「作家の窯元(かまもと)」を定めることがよくある。実際に作家を訪ねて、作品を本人から直接買う。これがことのほか楽しい。
 作り手その人による説明を聞き、ときにはお茶に呼ばれたりしながら、作品をゆっくりと見定める。至福の時間である。世の中で、こんなに贅沢(ぜいたく)なことってあるだろうか。作品を持ち帰ったあとも、幸福感は続く。旅の思い出を反芻(はんすう)しながら、その器に料理を盛りつけたり、花を生けたりする。陶芸っていいな、とつくづく思う。
 陶芸家の中でも、私は、英国人作家、バーナード・リーチに格別に思い入れがある。20代前半で来日、陶芸家となったリーチは、東西の文化の懸け橋となるべく、日本各地で作陶し、英国のセントアイヴスに窯を開いて、陶芸の道を多くの後続たちにつないだ。その軌跡を確かめたくて、2年前英国ポタリー(陶芸工房)訪問の旅に出た。
 英国は欧州の中でも陶芸が盛んな国である。2千以上ものポタリーが存在し、個性的な作品を生み出している。独特の風土や文化、そして食を堪能する旅の、なんと楽しかったことか。
 本書では、英国ポタリーに造詣(ぞうけい)の深い筆者が、その魅力をていねいにつづる。英国南西部やウェールズのみずみずしい風景の中、陶芸家たちが創り続けてきた温かみのあるスリップウエア(英国の伝統的陶器)や器の数々。ページをめくるたびに、この器がうちのテーブルにあったらどうだろう、と想像して楽しくなる。
 各ポタリーへのアクセス方法や宿泊先まで記してくれている絶好の手引書。本書を片手に、またポタリーの旅に出かけたいものだ。
    ◇
世界文化社・1728円


関連記事

ページトップへ戻る