コミック

まちあわせ [作]田中雄一

2014年07月06日

■残酷で美しい奇想のドラマ

 タイトルも作者名も地味というか平凡。しかし、ひとたびページを開くと、そこには見たことのない世界が広がっている。
 いや、人によっては見たくもない世界かも。何しろいきなり出てくるのが〈十二脚虫〉と呼ばれる巨大で醜怪な虫である。そいつが大量発生し1万人を超える犠牲者を出した大災害後、危険区域として立ち入り禁止となった街を舞台に害虫駆除作業員たちの奮闘と葛藤を描く巻頭作をはじめ、収録4編すべてに異形の生物が登場する。独自の進化を遂げたサル、奇妙な生殖戦略をとる生き物、人類の生存を脅かす巨獣、いずれも神経を逆なでするかのような造形だ。
 にもかかわらず、読後感はむしろ透徹。単なるパニックものに終わらぬ人生の妙味と苦味(にがみ)がにじみ、残酷だが美しい。万物の霊長などと威張ってみても、人間はしょせんちっぽけな存在なのだと痛感させられる。
 とりわけ胸を打つのは表題作だ。幼なじみ男女の愛のドラマだが、これほど切なく壮大な待ち合わせはなかなかない。過酷な運命を描きながら、それに屈しない生命と意志の力に満ち、ほのかなユーモアが漂うのは全編に通じる美点である。
 奇想の詰まった340頁(ぺーじ)超の大著。人間の存在はちっぽけでも想像力は無限なのだ。
    ◇
講談社・1296円


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