コミック

珈琲と白昼夢 [作]右田いこい

2014年07月13日

■「共に生きること」の手応え

 著者の初単行本となる作品集。収録されている三つの短編は、どれも比較的地味なドラマだ。物語の舞台は、バイト先の喫茶店や、田舎で暮らす祖母の家の庭、文化祭を準備中の学校など、ありふれた日常的な場所。そこで出会う者たちが、少しだけ心の距離を詰めていくさまがていねいに描かれる。これ見よがしな派手な描写はない。どれも、身近な者たちの間の心のゆらぎが、繊細だが決して甘くない目でまっすぐにとらえられ、じわじわと読む者の心に届く。
 設定がまったく異なる3作品だが、物語はいずれも「共に生きること」の手応えへ向かって展開していく。たとえば喫茶店にまぎれこんできた幽霊。学校の文化祭を手伝う魔法使いの少年。人ならざる者や異郷の者に対し、自然体で共に生きようとする姿勢が、登場人物たちを貫いている。ただそれだけのことが、読む者の心に強く残る。
 共に暮らすことで生じる矛盾から、目をそらすことのない強さと、その矛盾をそのまま受け入れて、共に生きようとする迷いのなさ。そのまっすぐさは、たぶん今の時代の空気の中で、ますます輝いて見えるような気がする。
 著者のこの先の歩みに、じっくりつきあって行きたいと思わせる、魅力の詰まった1冊だ。
    ◇
マッグガーデン・617円

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