コミック

白馬のお嫁さん [作]庄司創

2015年01月11日

■固定観念揺さぶる「産む男」

 高校入学を機に故郷の島を離れて寮に入ったヘタレ男子が、いきなり風呂で美少女3人組と鉢合わせ——というオープニングは、ベタな萌(も)え系ハーレムラブコメのよう。が、その3人が実は男で、しかも遺伝子操作により出産可能な体を持つというから、事態は少々複雑だ。
 舞台は2063年の日本。働く女性のための〈産む男〉として出産・育児に特化した遺伝子デザインを施された彼らは、頼りがいある結婚相手の獲得をめざしている。一方、見た目はゴツいのに極度に臆病な主人公の男子も、いっしょに島に来てくれる嫁探しが目標だった。
 そんな彼らの奇妙な共同生活を、男女同居コメディーのパターンをわざとらしいほど踏襲しながら描く。いわば“SF婚活ラブコメ”だが、ドタバタ調の展開とは裏腹に、背景となる社会観や人間観はシビア。ジェンダーや家族の問題はもちろん、少子化、階層格差、少数派差別、虐待といった今日的なテーマがそこかしこに顔を出す。
 〈産む男〉と母体集団〈WOLVS〉の設定は前作『三文未来の家庭訪問』とつながる。固定観念を揺さぶり、自由と自立と幸福の意味を問う点も共通。良妻賢母幻想を逆説的手法で無化することが、多様性を認める社会への一歩となればいい。
    ◇
講談社・691円
 


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