コミック

エシカルンテ [作]森和美

2015年02月08日

■大地の声を聴く少女に出会う

 爆発的な生命エネルギーを湛(たた)えているのに、どこかしら静かなたたずまいの本作。著者は、これが初単行本となる森和美。
 まだそこここに戦禍が残る1952年。ある出来事がきっかけで声を失った少女・千鶴は、一家4人で知床から北海道中央部に越してきたことで、大地の声を聴く少女・静子と出会う。
 濃密な闇夜に飛ぶシマフクロウ、冷涼な朝に立ちこめる霧。柔らかい筆致で描きだされるのは、野生の息遣いが感じられる雄大な北海道の自然だ。雪解け水が流れ込んだ小川で衣服を洗い、畑仕事の合間に山へ分け入り山菜を採る。たくましく生きる入植者たちの暮らしにも温かな視線が注がれていて、すがすがしい。
 半面、著者は自然の厳しい側面も丁寧にすくいあげる。その描きようには、手放しの礼賛も過度な畏怖(いふ)もない。読んでいて心地いい自然との距離感を成立させているのは、2人の少女の存在によるところも大きい。ある時期の少女だけが持つ神秘性と、小さな気配をも感じ取ることができる繊細な感覚。少女と自然がシームレスに表されている場面もあり、両者の関係性が刻々と変化していくのもいい。誠実な語り口で積み上げられた北の大地の物語。読めば深い記憶が呼び起こされる。
    ◇
講談社・637円

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