夜の床屋 [著]沢村浩輔

2015年02月15日

■予想外の壮大な展開に脱帽

 山道に迷い、無人駅に一泊することにした2人の青年。深夜に駅近くの理髪店に明かりがともるのを見て、不思議に思った彼らが店を訪ねると——第4回ミステリーズ!新人賞受賞作を巻頭に置いた連作ミステリー。前半で日常のなかで遭遇する謎を扱った短編集と思わせて、後半には予想外のダイナミックな展開が待っている。巻末解説の千街晶之氏の言葉を引用すると「読者は『今、自分が読み終えた小説は一体何だったのか』と茫然(ぼうぜん)とするに違いないのだ。こんな途轍(とてつ)もないことを思いついた発想力と、それを成立させた構想力への感嘆とともに」。
 2011年の単行本刊行時は伸び悩んだ。文庫化の際「後半のファンタジックな部分の含みも持たせることにし、タイトルを変え、カバー装丁も暗い雰囲気のものにしました」と、単行本時からの担当編集者、古市怜子さん。POPには先述の千街氏の言葉を使用。これらが功を奏して文庫は昨年6月刊行以来、毎月重版している。
 「2話目の『空飛ぶ絨毯(じゅうたん)』は本格ミステリーとして評価を得た作品。後半はホラーの要素もありますが、著者はごく自然に怪異と謎解きを同じ比重で扱っています。新しいタイプの作家だと思います」と、古市さん。版元営業部の渋沢大和さんは「この意外なラストに関しては書店員さんの間でも議論になっていました。読んだ人が語り合いたくなる作品だと感じています」。
 後半にはスコットランドの怪異譚(かいいたん)が挿入される。実はこれは第3回ミステリーズ!新人賞の最終選考に残った、本来は独立した短編。それを現代日本が舞台の本作に盛り込み、壮大な世界を作り上げた手腕に脱帽。
 刊行されたばかりの第二作『北半球の南十字星』(東京創元社)は『宝島』を思わせる海洋冒険ミステリー。引き出しの多い新鋭である。
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 創元推理文庫、799円=10刷10万500部

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