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阪神・淡路と東北の「災後」 土方正志さんが選ぶ本

2015年03月08日

今年から入居が始まった宮城県気仙沼市の災害公営住宅。市内初の「高層住宅」になった

■学べるものはなにか
 あの日から間もなく4年を迎えるが、今年は阪神・淡路大震災20年の節目の年でもある。この20年でなにが変わり、なにが変わらなかったのか。東北被災地に生きる私たちが阪神・淡路から学べるものはなにか。あるいは、学べていないとしたら、それはなぜなのか、問題はどこにあるのか。さまざまに考えさせてくれるのが塩崎賢明『復興〈災害〉――阪神・淡路大震災と東日本大震災』である。

■復興の〈学〉こそ
 復興に関わるさまざまな事象が被災地の現実を好転させるどころか悪化させている。それを〈復興災害〉と名付けて、東北被災地の読者としては日々の現実に思い至らされる。自然災害を、あるいは防災・減災をテーマとした〈学〉や〈論〉はある。だが、生き延びた者たちの復興のためのそれは物心両面共に未(いま)だしの感が否めない。「災後」にあって被災者が一歩前に進むための復興の〈学〉や〈論〉こそがいま切実に求められていると強く思う。岡田広行『被災弱者』(岩波新書・864円)と今野晴貴編著『断絶の都市センダイ ブラック国家・日本の縮図』(朝日新聞出版・1620円)も併せて。東北被災地で今なにが起きているかを知ることは、あなたの町の災後を知ることにも繋(つな)がるはずだから。
 阪神・淡路と東日本の災後の日々の最大の違いは原発事故にある。福島第一原発の今を知るには現役ベテラン原発作業員の手記ともいえるハッピー『福島第一原発収束作業日記』(河出文庫・896円)がある。廃炉に向けて「現場」で苦闘するみなさんにこころから謝意と敬意を捧げたい。みなさんがいるからこそ、私たちの暮らしがなんとか続いている。
 さりながら、東北被災地に暮らす私たちには、いま自分たちのまわりでなにが起きているのか、それもまた気にかかる。平田剛士『非除染地帯 ルポ3・11後の森と川と海』は、福島の山野に原発事故の影響を追う。原発事故は東北の豊かな自然に傷を負わせた。
 田附勝の写真集『「おわり。」~二〇一四年四月一日』(SUPER BOOKS・1944円。問い合わせはhttp://superbooks.jp/)もぜひご覧いただきたい。東北の野山に獲物を追って来た一人の狩人が、銃を手放した。その決断をカメラが追った。風評にせよ実害にせよ、山々に降り積もった放射性物質が、東北の山野に暮らす人たちになにをもたらしたか。豊かな自然は東北の誇りだった。原発事故にその誇りを奪わせるわけにはいかない。

■必ず「次」は来る
 そして、生き延びるための本を子供たちへ。河田惠昭編著『にげましょう 災害でいのちをなくさないために 特別版』は絵本仕立てで災害の瞬間をなんとしてでも生き延びよと子供たちに伝える。簡潔な絵とメッセージが痛切に読む者に響く。児童書では土岐憲三・河田惠昭・林晴男監修『12歳からの被災者学 阪神・淡路大震災に学ぶ78の知恵』(NHK出版・1296円)もぜひ。今日なのか明日なのか、あるいは5年後なのか10年後なのか。この地に生きる限り、いつかどこかに、そう、例えばあなたの暮らす街に、かならず「次」は来る。その瞬間のために、子供たちに生き延びる知恵を常から伝える責務を私たちは負ってはいないか。子供たちにそんな本をこそと願う。
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 ひじかた・まさし 「荒蝦夷」代表 62年生まれ。仙台市の出版社・荒蝦夷(あらえみし)代表。著書に阪神大震災の被災者の記録『てつびん物語』(偕成社)など。

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