新書の小径(週刊朝日)

全国駅そば名店100選 [著]鈴木弘毅

2015年03月27日

■駅そば道は深い

 1日3食「駅そば」でいい。
 ……と、カバーに印刷してある。こういうのはふつう帯に印刷してあるのだが、あえてカバーに刷り込んだところに著者のやる気が伝わる。「これだけ美味くて安い食べ物はない!」ともある。うーむ、駅そばがそこまでのものか。
 この本は、日本全国のうまい駅そばを写真入りで紹介したガイド本なのだが、少し多めの前書き的なものがある。それを読むと「なるほど駅そば道は深い」と思わされる。駅そばの店が昔はホームにあったものが今はコンコースが主流である(ホームにあると、ホームが狭くなり朝夕のラッシュ時に危険になる)とか、「改札内外のジレンマ」なんていう見出しを見ると、著者の、駅そばに対する熱い思い入れが感じられる。
 著者はきっと「美味い立ち食いそば」ではなく「駅にある立ち食いそば」というもの全体を愛しているのだ。手軽さや安さや、そしてある種のまずさまでひっくるめて愛す。それが「これだけ美味くて安い食べ物はない!」ということなのだ。
 ページをめくって各地の駅そば写真を見ていると、いかにもまずそうなやつが出てくるのだが、それがかえっていい。以前から「まずいからこそ美味い」という食べ物はあるはずだと思っていて、まさにこの本の中にも現れる。それを食べに旅したいと思う。もちろん、「おっ、これはうまそうだ!」というのもいっぱいある。JR上毛高原駅の舞茸そばは、「舞茸の豊かな香りがストレートに感じられ、また食感も楽しい」とある。ぜったいうまいだろう。
 駅そばの実力を測るには「たぬき」を頼めというのも勉強になった。しかしこの「たぬき」、著者は「天カス入りそば」のつもりだけど、関西で「たぬき」は「油揚げのせそば」のことだから間違わないようにしてほしい。「天カス入りそば」の写真もそこにちゃんと載ってるけど(相鉄二俣川駅のもの。うまそう)、関西の人は早とちりしないでください。

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