本で床は抜けるのか 西牟田靖さん

2015年04月12日

西牟田靖さん(45)=早坂元興撮影

■増える蔵書と格闘する人々

 3年前、仕事場に借りた木造アパートの4畳半に大量に本を運び込んだ時、「床が抜けるのでは」と不安になった。それを機に、ノンフィクション作家の西牟田さんは、人は本と居住空間とのバランスをどうとっているのか、取材を始めた。
 井上ひさし氏のエッセーには本で床が抜けた一節がある。それを読み、先妻の西舘好子さんにどんな状況だったか聞きに行ったり、ニュースでも報じられた、とある東京のアパートでの床抜け騒動を調べたり。
 印象的なのは、蔵書を電子化で減らした人たちの思いだ。評論家の武田徹さんは都心への転居を機に多くを電子化したが、後悔しているという。本を日常的に目にしていれば記憶が刺激され、新たな検索もできるし、「出会う偶然」を味方にできたが、本の存在感がなくなると難しいと語る。一方、作家の大野更紗さんは積極的に電子化を進め、1K約10畳の居室ですっきり暮らしている。
 「大野さんは迷いがないようで、その整理術は“師匠”と呼びたくなるほどでした。武田さんは50代、大野さんは30代、電子化への思いは世代の違いもあるかもしれません」
 ほかにも、亡くなった草森紳一氏の北海道の書庫を管理する実の弟さんの話や、家族から疎まれていた元新聞記者の大量の蔵書の話など、本の持ち主と家族との関係が浮かび上がる内容も多く、引き込まれる。
 「人それぞれにストーリーがある。本の収納問題をこれほど変化に富んだ感じでまとめられるとは思っていなかった。意外な発見でした」
 本書には、増える蔵書と格闘しているうちに著者と妻子との間に生じた亀裂も、率直に書かれている。
    ◇
 本の雑誌社・1728円

関連記事

ページトップへ戻る