著者に会いたい

ヘンな論文 サンキュータツオさん

2015年05月17日

サンキュータツオさん(38)=山本和生撮影

■研究者たちの本気のおかしみ

 一見何の役に立つか分からない研究論文。でも、知りたいという研究者のほとばしる情熱が伝わる。
 漫才コンビ「米粒写経」として活躍しながら一橋大学で日本語学の非常勤講師も務める著者が、ライフワークの「珍論文コレクション」から13本を厳選。公園の土手に座る恋人704人を観察した論文「傾斜面に着座するカップルに求められる他者との距離」には「人はそれを『のぞき』というんじゃないか?」などと突っ込みつつ、実はすごい研究なのだと興奮を隠さずに紹介している。
 早稲田大学在学中に芸人を始め、落語や漫才など「笑い」についての研究も続ける。「M—1グランプリ」優勝者の漫才10年分を分析し、笑いの山場が平均約6秒に1回だと発見したことも。同大学院で「こんな変わった研究をしているのは自分だけかも」と不安に駆られ、他人の論文に興味が湧いて収集を始めた。
 「ひとつの研究分野というタコつぼに、とてつもなくすごいタコがいるのに驚いた。でも、つぼの存在さえみんなに知られてないんです」
 本書未収録のヘンな論文を尋ねると、船舶史家の山田廸生(みちお)氏「『坊っちゃん』と瀬戸内航路」をすぐに挙げた。漱石が松山の中学に赴任したときの東京からの経路を、通説を覆して解明した論文。「とてもスリリングで研究の醍醐味(だいごみ)を見たようでした。どうしても筆者に会いたくて連絡したら、半年は船の上だそう」
 論文筆者に興味を持ってほしいと語る。「実験方法や調査設計にもそれぞれ個性が出る。どこかおかしな研究者たちの大人げないほどの本気を感じて欲しい。少しでもその魅力を伝えられたらうれしいです」
    ◇
 角川学芸出版・1296円

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