ニュースの本棚

火山列島 黒沢大陸が選ぶ本

2015年05月31日

噴煙を上げる口永良部島の新岳=29日午後、鹿児島県屋久島町

■噴火史と実力を知り、減災へ
 鹿児島県・口永良部島で29日、噴火があった。箱根山では火山性地震が増え、噴火警戒レベルが引き上げられた。昨年は御嶽山が噴火、桜島や西之島は活発に噴火を続け、蔵王山でも地震が増加、日本が火山列島だと痛感している。
 人間の一生とは比較にならない時間スケールで生きる火山。災害も起こすが、大地を生み、豊かな景観や温泉などの恵みももたらす。口永良部島では幸い死者が出なかったが、上手につきあうには知識が必要だ。
 『火山と地震の国に暮らす』は地球科学の楽しさを示しながら、災害に対して科学ができることと限界を語る。減災には噴火歴を知り、ハザードマップを活用するなど災害に強い共同体作りが必要と説く。「科学の伝道師」を自称する火山学者である筆者は『火山噴火』(岩波新書・842円)では、噴火予知を目指す観測なども説明する。
 火山で異変があると、噴火するのか否か、活動が落ち着くと「終息宣言」を出せないのか、気象庁や火山学者は判断を迫られる。数十万年にわたって噴火してきた火山を、100年あまりしか観測していない人間が見切るのは難しい作業だ。

■色あせない教訓
 『復刻 桜島噴火記』は、1914年の桜島大正噴火について、噴火後に作られた「住民ハ理論ニ信頼セズ」と刻まれた碑文の由来を読み解く。地震が激しさを増すなか測候所は「危険なし」と言い続け、犠牲者が出た。噴火予知や情報伝達、専門家と行政の役割、デマ、乏しい観測体制、権威ある学者の発言力などを描く。84年初出版の本だが、科学が進歩した今も教訓は色あせていない。
 『有珠山 火の山とともに』(北海道新聞社・2052円)の筆者、岡田弘は2000年の有珠山噴火対策に活躍した火山学者。観光地で苦労を重ねてきた対策、噴火当時の舞台裏も語られ、我々が目にする防災情報の背景を考えさせる。
 火山灰が東北まで達した桜島の大正噴火だが、火山の力から見れば序の口。91年のフィリピンのピナトゥボ火山の噴火も小結ぐらい。大関や横綱が控える。マグマの大量放出でカルデラができるような巨大噴火は、人類の脅威だ。石弘之『歴史を変えた火山噴火』(刀水書房・1728円)は、気候変動を起こし、文明を滅ぼす噴火の例を読み解く。巨大噴火に我々が臨むのは、素人が伝説の大横綱と初対戦するようなものなのだ。

■火砕流が覆う地
 『死都日本』は、巨大な噴火を「破局噴火」と名付け、近未来の日本で起きた姿を描いた小説。科学的に正確な噴火の描写に火山学者が舌を巻いた。本書は「政治家という種族が日本の国土を如何(いか)に知らずして政策を決めてきたか」と指摘する。九州の大地は、過去の巨大噴火の火砕流で覆い尽くされている。このことは川内原発再稼働に向けた審査でも問題となった。予知は困難だと火山学者は口をそろえるが、九州電力は予兆をとらえて噴火前に核燃料を搬出できると主張している。
 火山といえば富士山。小山真人『富士山大噴火が迫っている!』(技術評論社・1706円)は、脅かす書名だが、ちまたの怪しい説ではなく、火山学者が冷静にやさしく解説する。
 日本は、大きな噴火が起きていない幸運なこの100年で発展した。近代社会が未経験の大噴火に、いずれ直面する。自然はわからないことばかり。畏敬(いけい)の念を忘れてはいけない。
    ◇
くろさわ・たいりく 朝日新聞編集委員 63年生まれ。著書に『「地震予知」の幻想』。

関連記事

ページトップへ戻る