売れてる本

ラク〜に生きるヒントが見つかる―般ニャ心経 [監修]加藤朝胤

2015年06月07日

■猫の写真、イメージの宝庫

 朝刊一面に掲載された本書の広告を見た瞬間、「やられた」と思った。そうか、まだこの手があったのか。
 もう何匹目のドジョウねらいか、可愛い動物の写真に名言とその解説を添えるというフォーマット。ルーツはおそらく、水野敬也氏らのベストセラー『人生はワンチャンス!』(2012年)や『人生はニャンとかなる!』(13年)だろう。水野氏のインタビューによれば、もともとは名言を壁に貼りたいのに他人に見られると恥ずかしいから動物の写真でカムフラージュする、という発想だったらしい。
 それにしても、なぜ猫なのか。実は、猫には「表情」がない。しかし身体を使った「表出」は豊富だ。前脚を手のように使うあたりも擬人化しやすい。つまり猫の写真は、心理検査の投影法のように、さまざまな意味を読み込めるイメージの宝庫なのだ。ネットが猫画像であふれるはずである。本書の「考えすぎじゃない?」と頬杖を突いてつぶやく猫の写真など、絶対そんなはずはないのにキャプションをつけられると、いかにもそう見えてくるではないか。
 無論そればかりではない。本書の成功が第一にはこの秀逸すぎるタイトルによるとしても、その内容を単なる名言集ではなく、「般若心経」に一本化した点も良かった。何ものにもとらわれず、あるがままに、今ここを愉(たの)しく生きよ。この「無常」と「無我」の教えもまた、猫たちの自由な生き方にいかにも似つかわしく見える。加えてそこにはストーリーがあるのだ。
 順を追って読んでいくと、まるで幸福な世界を求める猫たちの冒険譚(ぼうけんたん)という趣もあり、ちょっと感動的ですらある。猫たちの忠実な下僕であるすべての愛猫家にとって、手放せない一冊になりそうだ。
    ◇
 リベラル社・1188円=8刷6万部

関連記事

ページトップへ戻る