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腐ったリンゴをどうするか? [著]釘原直樹

2015年08月16日

■「社会的手抜き」の魅力研究

 「手抜きの研究」が国立大学(大阪大)の心理学教授によって行われ、海外でもメカニズムを解明する各種の実験が試みられていることを知り、人類普遍の課題であると気づかされる。
 「集団で作業を行うときのほうが、個人でするときよりも一人当たりのパフォーマンスが低下する現象」を「社会的手抜き」といい、原因や対策を究明するエッセー風研究書。読み進むにつれ、一筋縄ではいかない“手抜き界”に引き込まれていく。
 集団内に有能な他者がいると、自分の努力が不要に感じてフリーライダー(タダ乗り)を生み、逆に手抜きをする無能な他者がいても、腐ったリンゴがまわりのリンゴを腐らせるように感染する。実に厄介。
 事故を防ぐ多重チェックは、チェックする人数が増えるほど、他人任せの心理が強まる(リンゲルマン効果というらしい)。ブレーン・ストーミングも同じメカニズムで効果が落ちる。
 個人の成果をフィードバックし、評価可能性を高める防止法が示され、手抜き対策とは組織活性化と一体なのだと納得。
 ただ、「黒衣」として組織を維持しているプラス面も認め、手抜きは「蠱惑(こわく)的ですらある」として、その「魅力ゆえ」に研究に「努力」するという著者の動機が印象的。
    ◇
 三五館・1404円

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