著者に会いたい

生きづらさからの脱却—アドラーに学ぶ 岸見一郎さん

2015年11月08日

岸見一郎さん=滝沢美穂子撮影

■自分の人生は自分で決める
 ユングやフロイトに比べ、知られていなかったオーストリアの精神科医アルフレッド・アドラー(1870〜1937)。彼の理念を、古賀史健さんとの共著『嫌われる勇気』で一躍広めた哲学者が、半生やカウンセラーの体験を振り返り、今を幸福に生きる手がかりを探った。
 「人間の悩みは対人関係の悩み」「どんな人生を生きてきたかは今の、そしてこれからの人生を決定しない」。アドラー心理学は一見シンプルで理想論のようだが、現実主義的でもある。理想の自分や理想の他者を見ず、「もしも〜なら」の発想から脱却。人生は自分で選んで決めて責任を持つ、という考えだ。「理論というよりも生き方の態度です」
 30代の頃、小学校教師の妻と育児を分担、悩む局面があった。友人に勧められ、すべての対人関係を対等な「横の関係」と捉えるアドラー心理学に出会う。「もう元の考えには戻れないと衝撃を受けた」。以来、専門のギリシャ哲学と並行して学ぶ。「対等な関係では、子どもを叱りも褒めもしない。無理だとよく言われますが、僕は実践してきた」
 韓国や台湾でも著作が翻訳され、読者を広げている。「勉強や結婚などで親の期待に沿わなくてはと強く思う一方、自分のやりたいこともある。板挟みに悩む若い世代にはインパクトがあったんじゃないか」
 アドラーは第1次世界大戦に軍医として従軍。悲惨な現実を目の当たりにしながらも、他者を仲間だとみなす「共同体感覚」の概念を提唱した。「戦争や児童虐待、体罰が今もあるのは、アドラーの理想が体現できていない証し。アドラーは本当の意味で民主主義を説いた一番の思想家だと思っています」
    ◇
 筑摩選書・1728円

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