視線

画家の詩、詩人の絵 絵は詩のごとく、詩は絵のごとく [企画・監修]土方明司、江尻潔 [監修]木本文平

2015年12月06日

まど・みちお 《鳥のくる池》1961(昭和36)年

 普段まとめて見る機会があまりない詩人の絵が面白い。
 正岡子規が1900年に描いた自画像は、顔のほとんどが影となっている。この年の夏の大量喀血(かっけつ)との前後関係は不明。それが不気味さを増す。
 かわいいものもある。北原白秋の描く《雀(すずめ)をどり》では、雀と一緒に字も躍っている。稲垣足穂の《星の勝利》では、銀の星が、地上から黒い空めがけてとんでゆく。銀紙を切り抜いてできた星のチープさがたまらない。
 描きやすい水彩が多いのも特徴だろう。木下杢太郎、萩原朔太郎、宮沢賢治、瀧口修造、まど・みちお、春日井建、吉増剛造、田畑あきら子などだ。水彩のようにみずみずしい青を基調とした油彩を描いたのは西脇順三郎。いつも心が西洋に向かっていればこそ、扱いが難しい油彩をあえて(しかし自然に)選んでしまったのかもしれない。
 まどの絵を本書ではじめて見た。童謡「ぞうさん」の作詞者としても知られる彼は、1961年から3年間、抽象画の制作に専念したという。《鳥のくる池》と題された作品を見ると、鋭角の三角形がいくつもあるからか、空気が静かにはりつめていてどこか哀(かな)しげだ。でも、詩情に流されない構築性をきちんと備えている。
 詩人がおしなべて節度を持っているのに比べると、画家の多くは詩を少し無邪気に扱っているように思えたのも事実。その点、5歳の時に友達宛(あて)に書いた「脅迫状」を載せたO JUNは素敵(すてき)である。彼はこう書いたという。「の●(●は「う」に濁点)ちやん あした ひあくえんまんもてこい。」
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 土方明司、江尻潔企画・監修、木本文平監修、青幻舎・3240円

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