同性婚 砂川秀樹さんが選ぶ本

2015年12月13日

今年4月、東京・新宿で同性婚挙式を行った一ノ瀬文香さん(左)と杉森茜さん(右)

■パートナーシップ維持のために
 今年は、日本における同性カップルをめぐる歴史が大きく動いた年となった。それは、東京都渋谷区で、一定の条件をクリアした同性カップルへパートナーシップ証明書を発行する条例が可決されたこと、次いで世田谷区でパートナーシップ宣誓に対する証明書を発行するための要綱が取り決められたことによる。これらは、日本の行政が初めて同性カップルのパートナーシップを認めたものであった。各メディアで「同性婚」など同性間のパートナーシップに関する話題が頻繁に取り上げられるようになり、兵庫県宝塚市がそれに続くことを決定した。
 このような動きが語られるとき、おうおうにして、結婚の多様化という言葉が使われる。しかし、世界的にみれば、もとより結婚は、普遍的定義が不可能とさえ言われるほど多様なものであり、変化するものなのだ。
 わかりやすい一例として、『ジェンダーで学ぶ文化人類学』の冒頭で、著名な文化人類学者エヴァンズ=プリチャードの書からの引用で例示される、アフリカのヌアー族の「女性同士」の結婚が挙げられるだろう。ただし、この結婚は、亡くなった兄の代わりを妹が務めるもので、社会的位置づけは異性カップルだ。しかし、ほかの民族でも、生物学的には男性同士、女性同士となるさまざまな形の結婚が存在してきた。

■必然的な流れ
 とはいえ、一方の者がジェンダー移行することなく、かつ異性間の関係性と同等のものとして位置づけられる同性カップルのパートナーシップは、現代的なものと言えるかもしれない。
 しかし、強調しておくべき点は、この流れの土台には、異性間の結婚自体が、財産や身分の移行、労働力の強化、集団の結び目といった役割から、当人同士の感情に重きがおかれるようになった変化があることだ。
 結婚が、基本的に当人同士の気持ちに基づき決定され継続されるようになった以上、同性カップルが結婚を求めるようになったのは、必然的な流れである。『同性愛をめぐる歴史と法』に収録の二宮周平「家族法 同性婚への道のりと課題」は、そのような結婚自体の変化も含め、同性婚をめぐる世界的な趨勢(すうせい)と、今後必要となる議論について法学の観点から論じている。
 同性カップルの法的保護について話をするとき、「二人の気持ちさえあれば、制度はなくてもいいのではないか」という言葉が聞かれることがある。しかし、気持ちだけがある状況において、パートナーの看病や見送り、葬儀への参加、その後の財産継承、ともに育ててきた子の養育権などに関連して、いかに多くの悲劇があったかが、『同性婚 ゲイの権利をめぐるアメリカ現代史』(G・チョーンシー著、上杉富之、村上隆則訳、明石書店・品切れ)に詳述されている。

■法や制度が必要
 ようやく日本でも始まった同性パートナーシップを認める施策だが、残念ながらそれそのものだけでは法的拘束力をもたない。よって、現在日本には、同性カップルのパートナーシップを直接的に保護する法律はない。その状況下で、ふたりの関係をどのように保護していくか。その問いに具体的に答える書が、『ふたりで安心して最後まで暮らすための本』だ。
 恋愛などの先にあるパートナーシップは、きわめて親密な関係性と言えるが、それを維持していくためには、社会的承認、法的、制度的な仕組みとも無縁ではいられないのだ。
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すながわ・ひでき 文化人類学者 66年生まれ。著書に『新宿二丁目の文化人類学』など。

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