思い出す本 忘れない本

光浦靖子さん(お笑い芸人)と読む『彼女がその名を知らない鳥たち』

2015年12月13日

光浦靖子さん(お笑い芸人) 大久保佳代子さんとお笑いコンビ「オアシズ」を結成し活動。近著に『お前より私のほうが繊細だぞ!』=西田裕樹撮影

■こんな恋愛、自分には無理

『彼女がその名を知らない鳥たち』 [著]沼田まほかる (幻冬舎文庫・741円)

 元気な時に読んで下さい。弱っている時に読むと、本の世界観に持っていかれちゃうんで。ハッピーな善人は出てこない。だから読後感はねずみ色っぽいドヨーンとしたイメージだけが残って、寝付きが悪くなっちゃうけどね。
 まほかるさんの言葉のチョイスは絶妙。ある男性をすごく卑しく描いていて、「ここまで嫌だって思いをわき上がらせられるんだ」って感心してしまう。最後のオチで、サスペンスをどえらい恋愛小説に一変させてしまうところもすごい。自分がこれからの人生でこんな恋愛をすることはないだろうなって思いました。
 本との出会いは小学校の図書館。借りるともらえるシールを集めたくて、片っ端から読んでた。特に少年冒険小説に夢中になってましたね。
 20代でテレビに出るようになってから、本を自由に買えるようになりました。はじめはかっこつけて難しそうな小説ばかりを買ってたけど、理解できなかった。ある時、書店で平積みされてる売れてる本を読んで、「本のエンターテインメント性ってすげーな」って。最近は女性作家の作品にはまってます。この作品もそうだけど、人物描写や人の内面の掘り下げ方が素晴らしい。桐野夏生さんや角田光代さん、西加奈子さん、篠田節子さん……。きりがない。
 入浴中と就寝前が読書の時間。もう読んでからじゃないと眠れない。朝まで一気読みなんてこともあるけど。自分は、すごく遊び上手な人間だと思ってます。だって小さな紙をめくっているだけで、こんなに大興奮できるんだから。大人になるって、性格も丸くして生きていくことでしょ。そうやって自分も他人も快適にすごしていく。でも小説の世界は違う。日常生活でそこまで人を憎んだり愛したりしてたら身が持たない。本に乗っかっていけば簡単にそんな世界に運んでいってもらえる。本を読まないなんてもったいない。
 (構成・塩原賢)

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