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「無知」の技法 [著]S・デスーザ、D・レナー

2015年12月13日

■知識に縛られぬ「余白」の力

 「知は力なり」と謳(うた)ったのは哲学者ベーコンだが、無知がよい方向に貢献することもある。そんな「無知」の効能を記したのが本書だ。企業コンサルタントの著者らは古代ギリシャから現代の起業家まで多数の逸話から無知の利点を紹介する。
 エイズウイルスの新しい予防接種の発見を目指したところ、専門家からは有望な案は出ず、異なる分野の研究者のほうがよい案を出した。リーマン・ショック以前、金融市場で信用収縮が起きていたが、専門家はリスクマネジメントができていると思い込み、金融危機を招いた。
 もちろんまったくの無知を推奨しているわけではない。ここで言う無知とは、既存の知識に縛られない余白のことであり、そこには機会と可能性があると指摘する。逆に言えるのは、培った知識を新鮮な視点をふさぐ壁にしてはいけないことだ。
 ソクラテスは「私は私が無知であると知っている」と言い、名探偵ホームズは「細部から学び、先入観にとらわれずに事実を吟味する」。ミスもあるだろうが、エジソンはそのミスすら特許にすると語ったという。
 「ハングリーであれ。愚かであれ」と言った名経営者もそんな考えだったのだろう。伸びやかな心を持ち続ける重要性に気付かされる。
    ◇
 上原裕美子訳、日本実業出版社・2160円
 


「無知」の技法NotKnowing

著者:スティーブン デスーザ、ダイアナ レナー、上原 裕美子
出版社:日本実業出版社

表紙画像

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