エンタメ

マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ [著]古内一絵

2015年12月20日

■心も体も包み込む、懐の深さ

 大手広告代理店で企画グループのチーフを務める塔子は、社内で早期退職者募集が発表されたその日、終電で自宅に帰る途中に貧血を起こし、倒れてしまう。路上でうずくまっていた塔子に声をかけ、自分の店で休ませてくれたのは、いかつい体をドレスで包んだ、女装の男性=ドラァグクイーンだった——。
 昼は、ダンスファッション専門店、夜は不定期な夜食カフェ「マカン・マラン」となるその店のオーナーは、“シャール”。元はエリートサラリーマンだった彼が作り出す料理の数々は薬膳がベースになっていて、口にする人の体はもちろん、心も柔らかくほぐしてくれる。本書は、そんなシャールの店にやってくる人々のドラマを描いた連作集だ。
 描かれている四編がそれぞれに味わい深いのはもちろんだが、何と言ってもシャールの、全てを包み込むようなおおらかさ、あたたかさがいい。そこには、人生の半分を過ぎて「本当の自分の姿」になることを選んだシャールだからこその、懐の深さがある。こんな店があったら、通いたい!
 人生には晴れも曇りもある。でも、温かい料理と、自分を受け止めてくれる誰かがいれば、きっと大丈夫、人生は続いていくよ、と教えてくれる一冊だ。
    ◇
 中央公論新社・1620円

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