石田純一さん(俳優)と読む『原発メルトダウンへの道』

[文]藤崎昭子  [掲載]2016年01月17日

石田純一さん(俳優) 54年生まれ。79年、NHKドラマ「あめりか物語」でデビュー。ABC「おはよう朝日です」などに出演=山本和生撮影 拡大画像を見る
石田純一さん(俳優) 54年生まれ。79年、NHKドラマ「あめりか物語」でデビュー。ABC「おはよう朝日です」などに出演=山本和生撮影

■今こそ求められる「検証」

『原発メルトダウンへの道—原子力政策研究会100時間の証言』 [著]NHK ETV特集取材班 (新潮社・1836円)

 移動が多い毎日、暇さえあれば本を読んでいます。2013年に出たこの本は、NHK局内の本屋さんで手に取ったもの。日本の原子力行政の中枢を担ってきた人々の肉声に衝撃を受けました。
 旧科学技術庁の原子力局長などを歴任した元官僚が、1985年から9年間開催していた「原子力政策研究会」。この会合のテーマは、日本の原子力研究が戦前以来どう進められてきたのかを振り返って記録することで、100時間を超える録音テープが残されていた。その内容を丹念な取材で検証した本です。
 被爆国としてのジレンマや科学者らの慎重論を退けて「夢のエネルギー」に突き進んだ経緯、1回の事故で国家が破綻(はたん)するほどの損害が生じうるという試算結果が出されていた事実、そして「安全神話」に縛られて何より大事な安全についての論議が置き去りにされていく構造……。暴走というより、迷走ですね。
 チェルノブイリ原発事故が起きたのが86年。その2年後のドラマ「抱きしめたい」でトレンディー俳優と言われるようになった頃も、収録の合間にスタッフたちと原発について語り合ったりしていました。最近、社会問題に対して発言して物議を醸してますが、自分としては何も変わっていません。
 大切にしていることは三つ。過去に学んで養う「歴史観」、今起きていることを見極める「社会観」、そして命をも懸けられる大事なものは何かという「価値観」。この三つを高め合っていくことが大切だと思うんですが、昨今の反知性主義というか、考えることや検証することを怠って、安直な悪役をつくり出して事足れりとする風潮が気になります。福島で起きたことも、本当の意味での解決はまだまだ。現状に心が痛みます。
 とはいえ、僕はただの役者。我々なんかが出る幕じゃない世の中になってほしいと願います。
 (構成・藤崎昭子)

思い出す本 忘れない本バックナンバー

この記事に関する関連記事

ここに掲載されている記事や書評などの情報は、原則的に初出時のものです。

ページトップへ戻る

ブック・アサヒ・コム サイトマップ