SUPER FLASH GIRLS—超閃光ガールズ [著]趙燁

[文]大西若人(本社編集委員)  [掲載]2016年01月17日

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Mending 繕う

 布や紙に塗られた絵の具の跡に過ぎないのに、そこに風景や人物、静物を見てしまう。それが具象絵画。つまり目は自らだまされたがっている。それに特化した存在として、だまし絵やトリックアートと呼ばれるものがある。
 この本に収まるのは、人間の顔や体に描かれただまし絵を撮った写真の数々といえるだろう。同書によれば、作者の趙ひかる(ちょうひかる)は日本に生まれ育った中国人で、今まだ22歳だ。
 気づくのは、人の目は紙やカンバスではなく、身体に描かれたものでも、だまされたがる、ということだ。古くから描かれてきた人間の身体の上に写実画が描かれている、と気づくだけで、面白い。
 でもそれだけなら、トリックの面白さ。趙の描写は写真のようにそっくりというより、絵画らしいタッチを残している。むしろ、描かれている内容が特異な印象を残す。
 顔や体の皮膚を縫い合わせているように見える人がいたり、顔の半分が狼(おおかみ)になっているかのような人がたたずんだり。顔や体の一部が機械になったような人も、相手を抱きしめ切れないような人もいる。いずれも若い女性だ。
 ここには、痛みや不能感が漂う。寂しさと切なさが交差する。社会やそこに生きる人の内面も暗示する。作者は制作の背景に、日本人や中国人という型にあてはまらない身ゆえに抱く、すべての定型への疑問を明かしている。
 目を驚かせることが目的化せず、それを手段に表現したいこと、伝えるべきことがある。ただのトリックでは終わらない、読後感がある。
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 雷鳥社・1728円

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