再読 こんな時 こんな本

書店員に聞く 舞台裏への誘い

2016年02月06日

 ニュースの舞台裏の人間ドラマをもっと知りたい、と思っている方はいませんか? 昨年12月の油井亀美也(きみや)・宇宙飛行士の帰還に、今年の仮面ライダー生誕45周年……。知的好奇心を満たしてくれる本を選んでもらいました。

■紀伊国屋書店・川口健人さんに聞く
(1)ドキュメント 宇宙飛行士選抜試験 [著]大鐘良一、小原健右
(2)泣き虫プロデューサーの遺言状 [著]平山享
(3)鳶(とび) [著]多湖弘明
(4)しんがり [著]清武英利

■知りたい!人間ドラマ
 (1)『ドキュメント 宇宙飛行士選抜試験』は、2008年に実施された試験の密着取材をまとめたもの。油井さんはこの試験に合格し、宇宙に飛び立った。本書は、ニュースになる機会はあまりない試験の様子を明かす。最終候補者たちは閉鎖空間で寝食を共にし、知能テストのような課題を解きながら、リーダーシップや冷静さを評価されたという。採用担当者らの心理的圧迫をうけ、候補者が冷静さを失っていく様子はサスペンスドラマのようだ。
 子どもの頃、飛行士にあこがれたという川口さんは「夢だけでは進めない道と分かった。合格率0・3%の試験に挑む応募者たちに思いきり感情移入してしまった」と薦める。
 (2)『泣き虫プロデューサーの遺言状』は、「仮面の忍者 赤影」や「仮面ライダー」などのヒーロー番組を生みだした平山亨(とおる)さん(13年死去)の自伝。息子が、病床にある父の言葉を口述筆記した。学徒動員から、東映入社、番組づくりの激務まで、実に克明な記憶を語っている。
 赤影やライダーの再放送を何度も見た川口さんは、「監督や脚本家と打ち合わせ、テレビ局やスポンサーを説得し、限られた予算で視聴率を稼ぐ。できなければ打ち切り」という作り手の厳しい現実に驚いた。そして「新しいことに挑戦し、ヒットを生み出し続け、ファンも大切にした永遠の少年、平山亨こそ、ヒーローではなかったか」と思いを新たにしたそうだ。
 1月下旬の大雪で3季ぶりに落雪被害があった東京スカイツリー関連では、(3)『鳶(とび)』を挙げてもらった。建設現場での足場や鉄骨、クレーンの組み立てを担うとびの仕事をあますことなく解説する。筆者はツリー建設にも携わった現役のとびで、人が豆粒に見えるほどの高さで本人が撮影した写真も盛りだくさんだ。
 「重さ8kgの道具を腰に下げ、何十階もの高さを、雨でも雪でも作業するとび職人は、超人。本書を読むと、一人のとびが危険と隣り合わせの中、一人前になってゆく様子もわかり、思わず手に力が入った」と川口さん。読後に、芸術的な足場を組んだビルの建築現場を見上げ、とびの仕事の合言葉をつぶやいてしまったという。「本日もご安全に!」
 記者のお薦めは変化球の(4)『しんがり』。1997年に経営破たんした山一証券で、原因究明の役割を負い、最後まで奮闘した社員たちの生き様を描く。究明調査を担ったのは、社内で「場末」とやゆされる部署にいた社員たち。華々しさからほど遠いが、誇りを失わず黙々と「敗戦処理」に向き合う人間ドラマに胸が熱くなった。
 筆者は、巨人軍をめぐってかつての名物オーナーに弓を引き、読売グループを追われた清武英利氏。出世レースに敗れ、表舞台に立てなかった人たちに光を当てたのは、その経験ゆえだろうか。
    ◇
■(見るなら)「セックスの向こう側 AV男優という生き方」
 自分と同い年、そのうえ同学年の有名人だと、なにげなく動静を知りたくなる。1959年生まれの私の場合、気になるのは、俳優の渡辺謙さん、落語家の春風亭昇太師匠、そして、ゴールドフィンガーの称号をほしいままにしたAV男優のカリスマ、加藤鷹さんです。
 このDVD、3年前に惜しまれつつ引退した鷹さんをはじめ、20人の男優にインタビューしてAV業界の舞台裏を赤裸々に語らせたドキュメンタリー映画です。
 みなさん、知ってましたか? 月間4500本ものタイトルがリリースされ、年間売り上げが約550億円に達するこの業界で、体を張っている女優が約1万人いるのに対して、正真正銘のプロといえる男優は約70人しかいないことを。
 だから、ひとりの男優が過去にからんだ女優の人数は、5千人超えなんてことはざら。鷹さんは、彼方(かなた)を見つめるまなざしで、こう語っているのです。「セックスにおいては、男は女のしもべです」
 DVDの発売元はマクザム、税込み4104円。(龍)

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