思い出す本 忘れない本

高田明さん(ジャパネットたかた前社長)と読む『世阿弥の世界』

2016年02月14日

高田明さん(ジャパネットたかた前社長) 48年長崎県生まれ。ラジオとテレビの通販「株式会社たかた(現ジャパネットたかた)」を設立=戸田拓撮影

■「笑い」を批評の対象にした

 『世阿弥の世界』[著]増田正造(集英社新書・821円)

 「風姿花伝」を知ったのは2年ほど前。話し方を特訓中の社員が、世阿弥のことをテレビで見て「社長が言っていることに似ている」って教えてくれたんです。
 それで世阿弥を研究したこの本を読んでみた。「風姿花伝」は後世のために書いた秘伝の書。僕も退任を宣言した後で、「残したい」という思いに、感じるものがありました。能と通販では次元が違うかもしれないけど、人の心をどうつかむか、考え方は基本的に一緒です。僕は何千回と収録を繰り返す中で、商品の魅力を伝えるためには一体何を磨けばいいのかを、ただただ考えてきたんです。
 そうしたら、世阿弥の考えに自然と似ていた。僕がやってきたのは、世阿弥のいう「序破急」や「一調二機三声」だと気がつきました。序破急とは、どう話を展開するかという構成の考え方。一調二機三声は声の出し方や間の取り方。「2万9800円!」「金利負担!」って言う、その間が1秒違ってもだめなんです。以前は「3秒違う」「つかみが弱い」と教えていた。今は「序破急」と言えば、社員にはすっと伝わります。
 世阿弥は、三つの目が必要だと言った。まずは自分がどう見るか、という「我見」。「離見」という、見られている目も必要。消費者は何を求めているかを考える。そして、もう一つ、とても大事なのが全体を俯瞰(ふかん)する「離見の見」。私にとっては「見せる目」を意識するということであり、プレゼンテーションにつながります。
 新聞も同じじゃないですか。お客さんはサプライズを求める。世阿弥でいうところの「秘すれば花」ですね。「これをやってるのは朝日だけだよ」というものを作っていかなければいけない。リスクをとり続けないと企業は衰退してしまいます。
 退任には早いと言ってくれる人もいました。でも、世阿弥は、老人には老人の役割があると言った。ジャパネットを100年続く企業にするために、67歳の私なりの役割があるはずです。
 (構成・守真弓)

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