視線

ライトハウス すくっと明治の灯台64基 1870―1912 [撮影]野口毅 [解説]藤岡洋保

2016年02月07日

 灯台の魅力は二重の先端性にある。たとえば、島根半島の西のはずれに立つ出雲日御碕(ひのみさき)灯台。日本一の高さをもつこの灯台は、海に向けて水平に突き出す岬の先端性と、天空を指す垂直の先端性とによって際立っている。これが建設されたのは1903年、南下政策をとるロシアとの緊張が高まりつつある時期であり、軍事上の監視塔を兼ねていたと考えられている。ひとり最先端にたたずむ姿は防人(さきもり)を想(おも)わせずにはおかない。
 灯台が本領を発揮するのは、いうまでもなく夜間である。陸地や暗礁の在(あ)り処(か)を示す光によって船舶からの視線を一身に引き付けてきたのだが、GPSの普及によってその役割は相対化され、いまや重要な観光資源として、陽光ふりそそぐ陸からの視線を集めている。
 だが、灯台は、かつて時代の最先端に位置していた。幕末の慌ただしい開国の動きのなかで、安全な航路確保のための施設が必要とされたのだ。
 江戸時代以前から灯明台や常夜灯など同種の施設はあったものの、それらの光では、諸外国の船舶を迎えるためには不十分であった。国際社会の一員となるには、西洋列強にならう技術革新が必要であり、明治になると全国各地に次々と洋式灯台が建設されることになる。海の標識は近代化の標識でもあったわけだ。
 全国各地に今もなお残るその姿を写真とエッセイで伝える本書は、百数十年の歳月を経て生きつづける灯台のドキュメントとして貴重である。取り上げられた灯台の数は64基に及ぶ。灯台の魅力をあますことなく伝えてくれる一冊だ。

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