思い出す本 忘れない本

ヒロシさん(お笑い芸人)と読む『ビートたけし詩集 僕は馬鹿になった。』

2016年02月07日

ヒロシさん(お笑い芸人) 72年生まれ。「ヒロシです」のネタでブレーク。著書に自伝『沈黙の轍』、日めくり『まいにち、ネガティブ。』ほか。=都築和人撮影

■モテない僕もほっとした

 『ビートたけし詩集 僕は馬鹿になった。』[著](祥伝社黄金文庫・514円)

 芸人になりたくて九州から上京してきた当時、古本屋で偶然、手に取った一冊です。小学生の時に巻き起こった漫才ブームのツービートに憧れ、漫才師になりたいと思いました。僕にとって、たけしさんは金も名誉もすべてを手に入れた雲の上の人でした。それなのに、この詩集では、女性に振られて思い通りにならない。
 「酒やめよう、タバコやめよう、…人の為何かやろう/そうすれば、あの娘が帰ってくるかも」(「願かける」)って、もう彼女は帰ってこないことはわかっているのに、わらにもすがる思いで願をかけている。男の子の気持ちがそのまま出ていて、理解ができてたけしさんへさらに親近感がわきました。
 デートをドタキャンされる理由が並んでいる詩(「TEL」)の中に、「ちょっと風邪気味だって」とあります。僕は小学校のときからずっと女の子にモテなくてドタキャンばっかりされていたので、「ヒロシです。俺が遊ぶ約束をする女の人はみんな、当日になると、風邪をひくとです」というネタを初期につくりました。僕は売れてないし、お金がないからこんなに嫌な思いをするんだと思っていましたが、お金があって地位があってもどうにもならないこともあるんだなとほっとしました。
 「騙(だま)されるな」という詩では「人は生まれて、生きて、死ぬ/これだけでたいしたもんだ」という。一方で、「オーイ」という詩では「ポケットの金で満足か、/そーか、/じゃあ、さっさと死ね」とあります。「生きているだけで満足と思え」とも、「現状で満足しているなら死ね」とも言われているようです。僕はやっぱり欲があるからお金もほしいし、うまいものも食いたい。生きているだけで満足とは思えない。その辺の帳尻を合わせて生きていくのかなあ。むずかしいですね。
 断捨離ブームに乗って本棚の本を厳選しましたが、この本は今もあります。
(構成・都築和人)

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