エンタメ

一瞬の雲の切れ間に [著]砂田麻美

2016年02月21日

■哀しみに向き合い生きていく

 サッカーの練習からの帰り道、自転車で交差点を突っ切ろうとした八歳の少年は、家から五分に満たないその場所で、交通事故で命を落とす。
 雑貨スタイリストだった加害者の女性、有名出版社に勤める彼女の夫、その愛人、被害者の少年の母親、たまたま事故の現場に居合わせた男性。関わった複数の人物を主人公に、それぞれの視点で物語が連なっていく。
 突然降りかかってきた痛ましい出来事と、その哀(かな)しみに、人はどうやって向き合っていくのか。向き合いながらどうやって生きていくのか。起こってしまったことに打ちのめされ、自分を責め、悔やむ日々。ゆっくりと薄紙を剥(は)ぐように癒えていくと見せかけて、ふとしたことで再びざっくりと開いてしまう傷口……。
 それでも、彼らは、私たちは、生きていく。生きていかねばならない。辛(つら)く厳しい人生を進んでいかなければならないのだ。では、何を支えにすればいいのか。何が彼らの、私たちの杖になるのか。
 それは、本書を読めば分かる。瀕死(ひんし)の状態の少年が、命を振り絞って、手を伸ばしたもの。それこそが答えだ。心の深いところに、そっと囁(ささや)きかけてくるような一冊である。
    ◇
 ポプラ社・1512円

関連記事

ページトップへ戻る