CROSS OVER(週刊朝日)

ご当地アイドルの経済学 [著]田中秀臣

2016年03月01日

■アイドル経済学者の愛と情熱!

 田中秀臣は異色の経済学者だ。大学教授で、リフレ派の強力な推進者であり、実は、もう一つの顔を持っている。
 ……アイドル論客なのだ! 著書『AKB48の経済学』は中国語訳も出て、海賊版まで出回っているという!? とはいえ象牙の塔の高みからサブカルチャーを見下ろす高慢な学者タイプではない。日夜、地下アイドルのライブにハシゴして足を運ぶ根っからの現場派だ。新著『ご当地アイドルの経済学』は、そんな彼の面目躍如の一冊である。
 今や全国各地に存在するご当地アイドルを、経済学の視点で論じる? いや、長期不況で地方消滅とも呼ばれる惨状にアイドルこそ再生の鍵になる! という独創的な提言の書だ。まず田中は新潟へと飛ぶ。今年1月10日、NGT48の専用劇場開幕公演へと駆けつける。そしてNGTのキャプテン北原里英と本書の巻頭で対談を交わす。このフットワーク!このアクチュアリティー!
 AKB48グループの国内5番目の姉妹グループNGT=新潟こそ地方再生戦略の拠点となる。日本海側の雄NGTが勝利すれば「上杉謙信と武田信玄を合わせたぐらいのパワーになって、天下を取れますよ」と励まし、北原里英の瞳を輝かせる。田中は、ご当地アイドルの帰属する各地方の経済的な意義を実に詳細に解き明かす。ひいては日本は世界のご当地(ローカル)であるとの視点から日本型アイドルの創造的破壊(タイラー・コーエン)の可能性へと論を飛翔させる。こんな胸躍る大風呂敷も、経済学者の繊細緻密な知見によって裏打ちされていた。ジャニーズ事務所・嵐の総売上高は年間300億円超であり、日本のアイドル市場の規模が約2500億だとする試算の手際には舌を巻いた。
 上京したアイドルらに温かい視線を寄せ、ご当地アイドルのライブで感動のあまり涙を流す。アイドルに対する愛と情熱と、冷静緻密な経済学者の知性のありったけをぶつけた本書の姿勢に、私は感動した。我が同世代のアイドル同志の記した、これは画期的な一冊だ。日本の地方とアイドルには、希望がある!!

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