思い出す本 忘れない本

森末慎二さん(スポーツコメンテーター)と読む『黄昏(たそがれ)流星群』

2016年03月06日

森末慎二さん(スポーツコメンテーター) 57年、岡山県生まれ。84年のロサンゼルス五輪体操で鉄棒金、跳馬銀、団体銅メダルを獲得=山本和生撮影

 ■大人のほろ苦さ、愛読20年

『黄昏(たそがれ)流星群』 [作]弘兼憲史 (小学館・51集まで刊行中、524~596円)

 雑誌の「ビッグコミックオリジナル」で連載が始まった頃から、ずっと読んでいます。1995年に始まったんですね。当時、僕は30代。もう体操選手を引退していて、芸能界の仕事が一番忙しかった頃かな。
 選手時代から、海外に遠征するときなど、息抜きによくマンガを読んでいました。引退したらしたで、芸能界の仕事が本当に忙しくて、自宅に帰れないことも多かったし、いろいろ神経も使うし。そんなとき、移動のちょっとした時間の楽しみがマンガでした。
 読み始めた頃は、これは何だろうって感じだったかもしれない。50代、60代より上とか、そういう世代の恋愛物語ですからね。そして、登場人物のおじいちゃんが死んじゃうとか、人が老いて死ぬということが普通に話の中に出てくる。ちょっと遠い世界の話として読んでいたような気がします。
 でも、そこから20年読み続けていると、自分の年齢がじわじわ作品の世界に近づいてきて、今やほとんどその世代に入ってきちゃった。そうなるとまたどんどん親近感が増して、ほろ苦い感じがぐっとくる。
 マンガなんだけど実話のような、普通の人の私生活の話を聞いているような感じが好きなんだと思います。いろいろな人の、心の動きのようなものに触れることができる。ストーリーを追うというよりも、人の心の移り変わりをたどるのが好きなんでしょうね。
 ずっと同じ登場人物で続いていくんじゃなくて、3回とか4回で一つの話が終わるのもいい。それもあって同じ作者でも、「島耕作」シリーズより、僕はこっちのほうが好きなんです。いろいろな人の心に触れられるから。
 20年続いているのに、今度はこうきたか、ああきたか、と毎回思う。普通の人の話のようでいて、でもやっぱり引きこまれてしまう物語。どうやって思いつくのか、聞いてみたいくらいです。
 (構成・柏崎歓)

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