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原発事故5年 大島堅一さんが選ぶ本

2016年03月13日

福島第一原発事故から8カ月後、敷地内の放射線量は毎時70マイクロシーベルトを超えていた(福島県大熊町)

■責任と開発体制の見直しを
 東京電力福島第一原発事故から5年が経った。一体なぜ事故が起きたのか。その原因が、安全性を軽視し、無責任に原発を拡張し、原子力を開発してきた体制そのものにあるのは明白である。関係者に責任をとらせ、この体制そのものを解体しなければ、原子力をめぐる問題は、これからも生み出されるだろう。
 事故後も、この体制は健在である。これは、一方では原発事故被害者を打ち捨て、他方では原発を再稼働させている。
 日野行介『原発棄民 フクシマ5年後の真実』は、避難した人々、特に避難区域外から避難した人々が、十分には救済されず、国や県によって無視されている現状と、その結果人々が直面する困難を詳しく描く。避難が復興の妨げであるかのように扱われ、十分な賠償が行われるどころか、避難者に対する僅(わず)かな支援すら打ち切られようとしている。事故被害者に落ち度はない。東京電力と行政の責任は重く、切り捨ては許されない。

■実被害を矮小化
 事故が起きたにもかかわらず、誰の責任も問われなかったため、原子力回帰が進んでいる。その主体は、経済産業省と電力会社を核とする、いわゆる「原子力村」である。小森敦司『日本はなぜ脱原発できないのか』は、その内実を見事に明らかにしている。福島原発事故後初のエネルギー基本計画策定過程で、政府が国民から集めた意見の9割が原発反対であったことを経産省は隠した。原子力死守の動きをえぐり出し、白日の下にさらしたくだりは圧巻である。
 責任をあいまいなままにすることは、被害実態の把握をもゆがめている。study2007『見捨てられた初期被曝(ひばく)』(岩波科学ライブラリー・1404円)は、事故発生直後に防護体制が全く機能しなかったこと、さらには、被曝被害が小さく見せかけられてきたことを実証した貴重な文献である。被害の矮小(わいしょう)化は、原子力規制委員会が作成した原子力災害対策指針に事故の教訓が生かされていないことにもつながっている。
 福島原発事故の被害は、被曝にとどまらない途方もない広がりをもっている。原発事故被害の本質は、地域の人々の人間らしい生活そのものが奪われたことにある。淡路剛久ら編『福島原発事故賠償の研究』は、東京電力と国の責任、原発事故による被害実態と損害、除染の問題点と課題など、原子力損害と賠償に関連する論点を包括的に整理し、原発事故被害をいかに救済すべきかを明らかにしている。第一線の研究者と弁護士の共同研究の成果である。
 原子力開発体制のあり方は、福島原発事故以前から問題視されていた。吉岡斉『新版 原子力の社会史』(朝日選書・2052円)は旧版を修正、福島原発事故に関する章を加えて、事故後、出版されたものである。日本の原子力開発の歴史を知ることのできる現代の古典である。

■解決方法を提示
 無責任な原子力開発の結果、福島原発事故以外にも、廃炉、放射性廃棄物問題などがもたらされた。困難な課題を解決するにはどうすればいいのか。この点については、評者自身もかかわった原子力市民委員会『市民がつくった脱原子力政策大綱』(宝島社・994円)が、福島第一原発の後始末や放射性廃棄物の処理・処分を含め、具体的解決策を提示している。原子力技術者から社会学者、経済学者まで広範な専門家と市民の共同作業で作られたものである。
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おおしま・けんいち 立命館大学教授(環境経済学) 67年生まれ。『原発のコスト』『原発はやっぱり割に合わない』など。

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