話題の新刊(週刊朝日)

東大駒場寮物語 [著]松本博文

2016年03月12日

 東大駒場寮での無頼な暮らしを、寮委員長を務めたことのあるルポライターが綴ったノンフィクション。100年以上にわたる自治寮の歴史をひもときつつ、廃寮を通告された90年代に駒場寮に住み、さまざまな外圧から居場所を守るために闘った青春を記録する。
 古くは、トイレまで行くのが面倒な寮生が上階の窓から「寮雨」を放っていたという、不潔さの代名詞のような空間だった。「麻雀太郎」と呼ばれ、3年間で体育実技の単位しか取っていないという伝説の先輩もいた。食事に関する不満を理由に暴動「賄征伐」を起こして退学処分になったが、復学のち首相になった平沼騏一郎。寮風呂の湯気を隔てて、落第点をつけた物理教諭が「小柴は寮の仕事ばっかりやって、さっぱりだめだ」と話すのを聞き、発奮して後にノーベル物理学賞を受賞する寮委員の小柴昌俊。そして犬鍋伝説をもつ畑正憲……。
 寮をさまざまな紛争の根源地とみなし、廃寮に追い込もうとする大学側に抗い、著者は法的措置のとられた寮に最後、立てこもる。ひたすら泥臭い日々が刺激に満ちている。

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