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それでも命を買いますか?―ペットビジネスの闇を支えるのは誰だ [著]杉本彩

2016年03月29日

■日本はペット後進国

 動物の命を大切に。生半可な気持ちでペットを飼ってはダメ。誰もがよくわかっていることである。なのに捨てられ殺される命があることも、これまたよくわかっている。問題は、どうすればこの状況を変えられるかが、よくわからないことだ。
 本書はペットビジネスの闇を知り、わたしたちにできることを学ぶための参考書だ。杉本彩が芸能界で培ってきた知名度をフル活用してみんなの耳目を集めようと奮闘している。バラエティ番組の企画で社交ダンスをしていた杉本が、その後プロのダンサーに成長していて驚いたことがあったが、いまはペットの命を守る公益財団法人を率い、殺処分の廃止や販売ルールの厳格化などを求めて活動している。何事もやると決めたら徹底的にやる姐さん気質がかっこいい。
 日本のペットビジネスとそれを支える法律はびっくりするほど時代遅れだ。フードやグッズより儲かるから生体販売をする。飼育の難易度や病気のリスクを伝えず「抱っこさせて売る。『かわいい』と言わせたら勝ち」と言ってのけ、あとのことは知らんふり。売れ残った動物たちは、書くのも憚られるような方法で処理される。業者にとって、動物は命ではなくモノだ。法律は動物を「器物」とみなし、持ち主の所有権を優先しているため、どう扱おうが基本的に自由なのである。だから、ひどい飼育環境に置かれた犬猫を飼い主に断りなくレスキューしようとすれば、それは「窃盗罪」に当たる可能性があるという(わー! 納得いかない!)。
 諸外国では保護施設でペットを探すのが当たり前、ガラスケースに入れて販売する生体展示も嫌われているという。日本は間違いなくペット後進国。恥ずかしさを通り越して落ち込んでしまいそうだ。ひとまずわたしたちは本書を読み、ガラスケースの動物を「かわいい」ではなく「かわいそう」と感じるところから始めないといけない。動物を救う前に、人間の意識を変えなくてはならないのだ。

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