性風俗のいびつな現場 [著]坂爪真吾

2016年04月24日

■困窮する女性たち、救う道は

 帯文に「彼女はなぜ母乳風俗店で働くのか?」とあります。まず母乳風俗店があることが衝撃だけど、そのほかにもこの本では「風俗の墓場」と呼ばれる(極悪の)激安デリヘル、「デブ・ブス・ババア」を売りにする店「デッドボール」、熟女専門店などの実態が紹介されます。
 しかし、この本はもちろん「こんなひどい世界がありますよ」を提示するだけの本ではありません。テーマは「福祉」!
 「デッドボール」で働く女の子は、ひどく太っていたり、歯がないなど極端に容貌(ようぼう)が劣っていたり、ふつうは風俗店の面接を通らない人たち。彼女らは店のサイト上で「罰ゲームとしてお使いください」という扱いを受けている。一見するとひどく差別的なこのお店、実は罰ゲームとして利用する男性はごくわずかで、固定客が多いらしい。あらゆる仕事からはじかれた女の子たちをいちばんポップに紹介する技が「罵倒」なのだ。
 激安デリヘルの例は別として、この本で描かれる風俗店経営者は基本的に女の子たちを助けたいという思いもあって働いています。福祉の介入にも積極的。つい疑いの目を向けてしまいそうになること自体、風俗に対する先入観だと気づきます。
 著者は経営者とも連携して「デッドボール」の待機所内に弁護士を呼び、無料で生活・法律の相談会を開いて、一見敵対する概念である風俗店と福祉を結びつけます。それは「風テラス」の名で継続的に行われるようになる。風俗は「悪」でないにせよ、法的に保護・推奨することはできない。だから、風俗を「容認」することが大事だと著者は言うのです。
 この本は「風俗もセーフティーネットだ」という話のさらに先を行っています。風俗をグレーな存在として容認しつつ、著者自らそこに福祉の手を介入させ、経済的にも精神的にも困窮する女性を具体的に救う道を探しているのです。手のつけようがないほど悲劇的に見えがちな場所に光を灯(とも)す本です。
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 ちくま新書・886円=4刷3万部 担当編集者によると、過激な帯や書名にひかれて買う男性が多いのが売れている一因。「女性の貧困や福祉に関心のある人にこそ、読んでほしい」

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