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ロケット・ササキ ジョブズが憧れた伝説のエンジニア・佐々木正 [著]大西康之

2016年06月05日

■シャープの開発担った卓越した技術者

 まずは登場人物に驚く。アップルのスティーブ・ジョブズ、ソフトバンクの孫正義、そしてノーベル物理学賞の江崎玲於奈。舞台は戦前から戦中、戦後の成長期へ。エンジニアの本で血湧き肉躍る経験をするとは想像していなかった。本書は一人の卓越した技術者の大河ドラマである。
 主人公は今年101歳、元シャープの役員佐々木正氏。戦前戦中は真空管の研究開発に勤(いそ)しみ、戦後はGHQの命で米国へ。現地技術者と交流し、工場生産の合理性や新技術を学んでいくのが前半だ。
 後半はシャープ入社後の奮闘記。周囲が疑問視する中、LSI(大規模集積回路)の開発に注力。小型化と廉価普及を目指し、16年後に11グラムのカード電卓という驚異的な技術革新を達成した。
 本書は、しかし、単に開発の成功譚(たん)で終わっていない。1世紀を越す人生の中、社会の激動が刻まれ、そこに時代を動かした人物も登場する。そうして人をつないできたのも、佐々木氏の魅力的な人柄あってこそだろう。ロケット・ササキという名は米国で月着陸船の部品開発に携わったときにつけられた称号だ。
 読み応えあるドラマだが、いまのシャープの変化も考え合わせると、また感慨深い。

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